長崎市・緊急事態宣言2週間 感染者減もクラスター警戒 田上市長「予断許さない」

長崎県独自の緊急事態宣言が発令されている長崎市中心部のアーケード=29日午後1時31分

 新型コロナウイルスの第3波で感染が急拡大していた長崎市に、県が独自の緊急事態宣言を発令して30日で2週間。感染者数は減少傾向にあるが、クラスター(感染者集団)が発生すれば病床は一気に逼迫(ひっぱく)する可能性がある。田上富久長崎市長は「予断を許さない」とし、引き続き感染防止対策の徹底を市民に呼び掛けている。
 「宣言の効果は出ているが、ベッドはまだかなりの割合が埋まっており、安心できる状況ではない」。市長は28日の定例会見でこう述べ、感染防止意識の“緩み”を警戒した。
 宣言発令の16日以降、市の新規感染者数は19日公表の22人が最多で今週はほぼ一桁で推移。県は飲食店などに要請した営業時間短縮などで「一定の効果が出た」と分析する。
 一方、同市を中心とする長崎医療圏の専用病床は今月中旬に約90%が埋まっていたが、28日時点で約50%まで下がった。ただ「大規模なクラスターが起きれば一気に感染が拡大する」(県担当者)可能性もあり、市は民間病院にも協力を求め、“第4波”に備えた医療体制構築を急ぐ。
 県は発令期限の2月7日を前に宣言の解除や延長を判断する見通しだが、時短営業や外出自粛、出勤者半減などの要請を「すべて解除することにはならない」(担当者)という。県内の感染者数は同市を含め減少傾向にあるが、全国の状況を考慮すれば「一気に対策を緩められる状況にはない」(同)からだ。
 時短営業をしている長崎市浜町の飲食店「貝バル アワガイ」の店主、分部高さん(38)は「1日4万円の協力金はありがたいが、家賃などに消える」と言う。テークアウト販売もしているが「時短要請が長引けばきつい。ただ宣言が解除されても、外食をする人がどれだけ戻ってくるだろうか」と不安を隠さない。

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 佐世保市も病床逼迫を受け独自の「医療緊急事態宣言」を発令して2週間となった。市内では宣言後に3件のクラスターが発生。このうち高齢者福祉施設「長寿苑」の感染者数は29日までに計44人に上り、昨年春のクルーズ船の集団感染を除き県内最大のクラスターに拡大した。市は「事態は悪化している」と危機感を強める。
 同市を中心とする佐世保県北医療圏の病床占有率は23日に76%に達し、28日時点でも約70%と高い水準にとどまっている。市は宣言解除の時期について「改善の兆しが見えず、解除を検討する段階にない。まずはクラスターを防ぐため、感染防止対策の徹底を市民に呼び掛けるしかない」としている。


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