GT-R生誕50周年を記念して生まれた限定モデルGT-R by イタルデザイン。1億5000万円〜という価格設定もさることながら、購入者層やデザイン決定に至る経緯などがとても興味深いのだ。そこで、今回はGT-R by イタルデザインの知られざる秘密をご紹介する。

中身はGT3レーシング仕様そのままの高性能版

ことのはじまりはGT-R生誕50周年を記念すべく、企画されたのがはじまり。イングランドのウェスト・サセックスで開催されるグッドウッドフェスティバルオブスピードの場で2018年にコンセプトモデルが発表され、それがいよいよ市販化されたというイメージだ。


コンセプトモデルから各国の安全基準などの法規に合わせるため、テールランプなどは変更されているものの、基本的にはコンセプトカー通りである。
そもそもGT-R by イタルデザインのベースとなっているのはレーシングカーのGT3マシンであり、エンジンやトランスミッションに至るまでレース仕様の高性能パーツを使っているのだ。市販化の皮を被ったレースカーというイメージである。

エンジンは3.8リッター V6ツインターボであるVR38DETTと型式こそGT-R NISMOと同様だが、専用チューニングを実施。これにより最高出力は、+120psの720ps/7100rpm。最大トルクは、+13.0kgmの79.5kgm/3600~5600rpmに達するという。
タイヤは、1インチアップとなるフロント255/35R21、リア285/30R21のミシュランパイロットスーパースポーツを装着。ホイールはアルミホイールにカーボンを組み合わせたタイプの専用品を履いている。

さらにボディ外販に至っては、ルーフやガラス、ボンネットに至るまでほとんどが専用品となる。実際車内に乗り込むとフロントガラスはノーマルよりも面積を狭めており、まさにレーシングカーといったところ。
さらにボディカラーはオーナーの好きな色を選択でき、自分だけの一台を作ることができるのだ。それゆえ、1億5000万円〜という価格も納得である。
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購入者は生粋のクルマ好き! 投資目的はほとんど0

現在もわずかながら台数が残っており、手に入れるチャンスもまだあるというが、現状購入した方々は、生粋のクルマ好きや歴代GT-Rのコレクターなどが名を連ねているという。通常このような限定車は投資目的で購入するひともいるが、こちらは別。スタート価格が1億5000万円〜と高額なこと、そして50台限定とスペシャルモデルにしては台数が多く、他の限定車よりも価値が跳ね上がることは期待できないという考えから、投資目的の方はほとんどいないという。
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ちなみに購入方法は原則現金一括であり、ローンや残価設定ローンといった我々庶民が思いつくような方法では購入できないのだ。もし残価設定ローンを組めるとすれば、5年後の残価は下手すると現在の価値よりも上がり、月々の支払いも案外低額なのでは? と期待していただけに筆者個人的には残念な結果であった。
じつはデザイン担当は日産だった!? 選ばれた人がスゴかった

GT-R by イタルデザインという名の通り、日産とイタリアのデザインスタジオ「イタルデザイン」がタッグを組んで生まれたモデルである。通常自動車メーカーとデザインスタジオを共同開発となると、メーカー側がクルマの開発を、デザインスタジオがデザインをするのが通例なのだが、このクルマは真逆。日産がデザインを担当しているのだ。
世界中の社員からデザインを募集
となれば、このテイストを他の日産モデルにも投入してよ! と思うはずで、筆者もその一人だ。なぜ、ここまでカッコよく仕上がったのか? それはGT-R by イタルデザインのデザインを決定するために開催された日産社内のデザインコンペに答えがある。
現在の日産デザインを統括しているアルフォンソ・アルベイザ氏が今回のプロジェクトに際して、日本、アメリカ、フランス、イギリスなど世界中にある日産のデザインスタジオから「みんなが思う50周年のGT-Rをデザインして!」と原案を募集。そこで選ばれたのがロサンゼルス勤務の男性スタッフの案だったのだ。しかも20代前半の超若手。今回のGT-R by イタルデザインは20代前半の若いスタッフがデザインしているのだ。


20代前半のスタッフといえば、ドアハンドルなどの細かい部分のデザインを手がけるため、クルマ一台、それも日産を代表するGT-Rのデザインを行うというのは異例中の異例。選ばれたデザイナーは生粋のGT-RファンでリアにはケンメリGT-Rと34型スカイラインGT-Rのエッセンを取り入れるなど、随所に歴代モデルの要素を落とし込んでいるのだ。ノーマルから大きく変わっているにもかかわらず、妙にGT-Rらしさを感じるのは、歴代モデルのエッセンスを取り入れているからというワケ。
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もしかすると今回のGT-R by イタルデザインのような既存のラインアップとは異なるデザインテイストが今後登場する市販車に反映される可能性も十分に考えられるのだ。それだけに今後の日産からますます目が離せない!
【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】