前田幸長氏は不安一蹴「MLBで開眼した田中は格段に進化している!」

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楽天に復帰した田中

プロ野球の12球団が1日に一斉にキャンプイン。今春は各球団ともコロナ禍により特殊なキャンプとなるものの、注目はやはり、8年ぶりの楽天復帰となった田中将大投手(32)だ。田中のキャンプ合流は今月中旬ごろとなりそうだが、24勝0敗で楽天を悲願の日本一に導いた2013年シーズンのような無敵のピッチングは期待できるのか。メジャーリーグ中継解説者で本紙評論家の前田幸長氏は「格段に進化している」と指摘した。

【前田幸長・直球勝負】もしかすると楽天時代のマー君しか知らない人は「別人」という印象を持つかもしれない。かつてNPBでプレーしていた当時の田中はピンチになるとマウンドでギアを上げ、相手打者を力でねじ伏せるような投球スタイルを見せていた。一言で表現すれば「制圧」。走者をスコアリングポジションに進めた際、マウンド上ではさらに一段と目つきが鋭くなり、直球と切れ味鋭いスライダーを主体とした攻めのピッチングでなぎ倒していく。そんなエースの姿にしびれた楽天ファンはきっと多いはずだ。

しかし、今の田中は違う。名門ヤンキースの先発ローテーションを長きにわたって守り切り、世界トップレベルの強打者たちを相手にしながら荒波に揉まれ続け、そこで生き残る術を習得した。多くの名投手を輩出し続けるMLBでも田中が「テクニシャン」と呼ばれる理由はそこにある。ヤンキース時代の彼はギアを入れるというよりも、ツーシームを主体に丁寧に低めを意識づける投球が随所で増えた。だからこそスプリットが冴え、相手に的を絞らせず面白いように地団駄を踏ませることができた。

メジャーの球審はNPBと比較するとストライクゾーンを低めに〝設定〟している傾向があり、そのあたりの読みも田中の頭の中には入っていたのかもしれない。こうした〝低めへの意識〟の蓄積が田中の制球力を格段に成長させたことは間違いない。

年齢を重ねたことを懸念する声もあるが、私はそうは思わない。日本時代の「制圧」、そしてMLBで開眼した「技巧派」の要素も加わった田中の投球術は、渡米前より格段に進化しているのは間違いない。個人的には彼が健康であれば17、18勝ぐらいはマークし、最多勝争い、さらには沢村賞の受賞も十分あると予想する。

常識的に考えて13年シーズンの24勝0敗のような快進撃を「常」として求めるのは難しいが、それでも制球力が大きくアップしたスタイルを駆使しながら、対戦する日本の打者を幻惑させつつキリキリ舞いにしそうな予感が漂う。

もちろん、いくら田中と言えども久々のNPB復帰で「アジャスト」の面において戸惑いを覚えることも少なからずあるだろう。ツーシームはNPB公式球では、どれぐらい〝動く〟のか。スプリットにしても、MLBとのストライクゾーンの違いに最初は抵抗感が生じるかもしれない。ほぼ統一されているMLB各球場のマウンドの硬さや傾斜と違い、日本は割とバラつきが多いところもネックとして考えられそうだ。

それでもおそらく田中は乗り越えていくだろう。中6日が日本球界の主流となっていることも追い風となるはずだ。とにかく今から田中の日本でのピッチングが楽しみでならない。

(本紙評論家)