【動画】橋物語・中島川の石橋群 水害乗り越え歴史刻む

中島川に架かる眼鏡橋などの石橋群=長崎市、中島川周辺

 川面に橋が映る姿は、まるでメガネのよう。長崎市中心部の中島川に架かる日本最古の石造りアーチ橋「眼鏡橋」は、長崎を代表する観光名所だ。辺りには10以上の橋があり、石橋群がつくり出す景観は地域の魅力の一つ。水害を乗り越え、歴史を刻んでいる。

 国指定重要文化財でもある眼鏡橋は1634年、長崎市寺町の興福寺の2代目住職、黙子如定が架けたと伝えられている。下流側の隣の「袋橋」から眺めるとメガネがよく見える。人気の撮影スポットだ。近くの護岸の石垣にはハート形の石があり、観光の記念撮影や結婚式の前撮りなどで、多くの人が訪れる。

 中島川流域の石橋の多くは、死者・行方不明者が299人に上た1982年の長崎大水害で大きな被害が出た。眼鏡橋は流失を免れたが、一部崩壊。さらに「中島川石橋群」として市の有形文化財71年指定された10橋(眼鏡橋は除く)のうち、6橋が流失した。

 残る4橋のうち一部が損壊した袋橋や「桃渓橋」は元の形に復元され、「高麗橋」と「阿弥陀橋」は水害対策の川幅拡張のため解体され、同じ名前のコンクリート橋が架けられた。高麗橋は解体後、市内の公園に移設された。一方、阿弥陀橋は移設先が決まらず、文化財は石材として30年以上保管されたままだ。

 中島川周辺は、地域住民の憩いの場、交流の場としても親しまれている。夏の風物詩「長崎夜市」もその一つ。地域活性化グループ「であいの会」主催の「中島川まつり」が前身で、川沿いに出店が並び、辺りはちょうちんに照らされ、和の雰囲気に包まれる。

 昨年、活性化グループの中心として地域を盛り上げてきた東古川町の安達征治さんと銀屋町の髙木忠弘さんが相次いで死去。コロナ禍で夜市も中止となり、寂しい1年が過ぎた。和菓子店「岩永梅寿軒」の岩永德二社長71)は2人との思い出を振り返り、「長崎夜市は子どもからお年寄りまで安心してつながれる場となっている。2人の思いを受け継ぐ若手も育っていて頼もしい。と語った。

 眼鏡橋近くの石柱に、じっとたたずむ犬がいた。近くに住む小溝重昭さん(68)の愛犬、柴犬のキィーちゃんだ。散策中に気に入った石柱の上で”銅像ポーズ”をするのが日課。小溝さんが孫の勧めで始めたインスタグラムでも大人気という。道行くマスク姿の人たちが、目尻を下げた。

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