巨人・桑田コーチ入閣が実現したワケ 原監督にしかできなかった〝過去の清算〟

東京ドームでキャンプインした桑田コーチ

レジェンド右腕がついに本格始動だ。巨人・桑田真澄投手チーフコーチ補佐(52)が、1日に東京ドームで始まった春季キャンプで〝指導者デビュー〟を果たした。唐突にも思われた年明けを迎えてからの電撃入閣はなぜ実現したのか? 投手陣の強化と底上げを期待される桑田コーチには、球団側からグラウンド内にとどまらない別次元で壮大な期待も寄せられている。

まずは様子見といったところか。桑田コーチが〝第2の人生〟を東京ドームで踏み出した。キャンプ初日の1日は自主調整が認められる主力組を中心とするS班に合流。まずは選手たちを観察することに重点を置きつつも、さっそくエース菅野ら投手陣にノックなども行った。

チーム方針からS班の選手たちと同じく練習中はトレーニング着。ユニホーム姿の披露はお預けとなったが、15年ぶりの巨人キャンプに「引き締まるという感じがしますね」。唯一にして最大の目標である日本一奪還に向け「(選手と)ともに考えて悩んで苦しんで悲しんで、そして最後に喜べる伴走者になりたい」と決意を語った。

技術的な指導が本格化するのは今後となるが、これまでにも桑田コーチを巡っては現場復帰への根強い待望論がわき起こりながら、実現に至るまでには相当な歳月を要した。ついに今年実現したのはなぜなのか? 球団関係者によれば、入閣を球団トップに直接打診した原辰徳監督(62)にしかできないギリギリのタイミングだったという。

「過去にいろいろなことがあったが、原監督は今年が一応の節目の年。当時のことで〝しこり〟を残す球団幹部は今はもういない。あとは原監督だけ。監督にしかできない過去の清算だったのではないか」

第2次原政権下の2006年、現役だった桑田コーチは球団のブログに退団を示唆する内容を記し、指揮官をはじめ球団幹部との間に確執が生じた。しかし、時は流れ、不快感を示していた幹部たちは球団を去り、残るは原監督だけとなっていた。その指揮官も今季で3年契約の最終年を迎えた。

「原監督が今回やらなければ、桑田コーチが巨人のコーチに戻る道が半永久的に閉ざされることになる。それは球団にとっても大きな損失」(同)。球団を離れた後も野球への情熱を失わず、外部から熱心に研究を続けてきた桑田コーチの知見は選手の育成だけでなく、球団の財産となるに違いない。

別の球団関係者は桑田コーチの復活に違った期待を込めている。「球団として、オールドファンを掘り起こすことにつながれば。桑田コーチの存在が、その起爆剤となってくれればうれしい」。新規ファンの獲得は球団にとって重要課題だが、同時に〝休眠中〟のG党も少なからずいるとの認識もあり、コアなファンを逃さない効果も見込めるというわけだ。

近年ではタレント業を中心に活動していた宮本投手チーフコーチと元木ヘッドが入閣し、クロマティ氏も昨季まで球団のアドバイザーとして招へいされた。桑田コーチが加入したことで、さらに追い風が吹く可能性は十分あるだろう。

桑田コーチ自身も再びユニホームを着ることについて「皆さん喜んでくれています。ありがたいことに」と周囲の期待の大きさに実感を深めている。投手陣強化はもちろん、元エースの復活劇はグラウンド内外に多大な影響をもたらしそうだ。

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