笠井アナの妻『公表は最初は嫌だった』 がんと言われて動揺しない社会になるには? 46歳、両側乳がんになりました67

検査・告知・手術・仕事復帰・・・誰かのお役に立てればと綴ります。

1月ももう終わり・・・早いですね。あと11か月もあっという間に終わるかも。

さて、今回の話題は、1月31日から始まった、CancerXの World Cancer Week2021 https://cancerx.jp/summit/wcw2021/

毎年新たに100万人が『がん』になり、2人にひとりが『がん』と診断される時代。り患者だけでなく、家族、同僚、友人、みんな当事者になりえるよねという時代。がんと言われても動揺しない社会を目指して2018年から活動されているCancerXのみなさん。

今年のイベントはすべてオンライン。地方に住んでいる私としては去年まで興味あってもいけなかった思いがあり、今年は参加しやすいなあというのが第一印象。今回は各セクションを取材者として見させていただいています。

そのレポートの1回目です。

『with Cancer がんを知り、関わりあって、変えていく』がコンセプト。
ご参加のメンバーのみなさんがキラキラされてまして、ちょっと気遅れしそうになりましたが、医・産・官・学・民・患者・医療者・全部当てはまる方・・・みなさん、何かを解決しようという気合とパワーにあふれた取り組みだなあと感じました。ききやすい1時間目安のセッションが並んでおります。31日(日)の初日は私の興味のあるテーマが並んでいました。

オープニングのすぐ後に行われた”【社会】~がんと言われても動揺しない社会へ~”
自らもサバイバーのMDアンダーソンがんセンターの上野先生・私ひそかに尊敬申し上げていていつかはお会いしたい、元ゴールドマン・サックスの副会長 キャシー松井さん、こちらもサバイバーの笠井アナと奥様のますみさん、に加藤官房長官。何か動かせないか、動くのではないかという期待をひしひしと感じる登壇者。

”ダイバーシティ(多様性)””アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)””スティグマ(汚名・烙印)”という言葉が何度飛び交っただろうというセッション。がんじゃなくても、女性活躍の文脈でも話題・問題になっているものががんという出来事を通してどんどんあらわになるなあ、と。問題はあらわになるけど、具体的な解決策までには時間が足りず、この問題の奥深さを痛感しました。

45万人の人がいま、がんを抱えながら、働いていて、毎年8万人が増えているそうです。その中でも”びっくり退職”でがんになったら働けない、と判断してしまって
2割が辞めてしまう現実。
がんと診断されて、『無理じゃない?』『できないんじゃない?』と異動を打診される、逆に『無理させちゃいけない』『休んでいいよ』『心配だ』と過剰に休むようにいわれるのありがたいけど、ショックで申し訳なくなってしまう・・・。そんな例が出されました。

上野先生は病院で、治療中は素晴らしくケアされたけれども、職場としては担当の患者さんが減っていた、という自らの体験談を。キャシーさんがおっしゃっていた、家族にさえ言われる可能性がある、『かわいそう』という言葉が傷つくなどの生の声は聞いていた患者さんは、お医者さんでもトップ経営者でも同じ思い、私もそうそう、と思った方も多かったのではないかと思います。

さらに、キャシーさんの仕事人間だった自分が『人生を見直すきっかけになった』というお話にも共感しました。

もうひとつ、印象的だったのはキャシーさんは『戻ってくるまでポストあけて待っているよ』と当時のボスに言われたそうです。『待っているよ』と言われてプレッシャーに思う人もいるかもしれないけどこの方が安心だなと思いました。お互いさまだと思い、”支え、支えあう”ことが本当に大事だなと。

カミングアウトしている人たちばかりではないですし、できない人もいっぱいいます。でもカミングアウトできる人が増えていかないと、いつまでも世の中は変わらないし、マイノリティ。
私も夫に『公表するのか?』と問われましたが、笠井さんの奥様も最初は『公表に抵抗があった』話がありました。みんなそれぞれストーリーがある。家族も第2の患者、受け止め、気持ちも様々。一筋縄では語れない”社会”のお話でした。

完全寛解という言葉が何回か出てきたのですが、患者さんにとって希望になることもあるけど乳がんの場合はかなり難しい判断。使うシチュエーションとタイミングが大事なのかもしれないなと勉強になりました。それも含めてまさに個別化の時代でひとりひとり違う。『本人がどうしたいか、どう思うかが大事』という上野先生の言葉がしっくりきました。

海外でも決して問題がないわけではないそうです。海外で寄付の文化が多い、病気もカミングアウト・シェアする文化があってうらやましいという声もあるし、実際に私もそう思うことが多いです。

でも日本人の人を想うやさしさで、個別化された『本人の希望を重視』の取り組みができれば、乗り越える日が来るのではないか。上手にバランスをとったロールモデルが増えれば、世の中は変わっていくのではないかと未来は見えました。

続いて聞いたセッションは
【情報】~どうすれば届く?発信者と考えるがん情報のあり方~。
私は、放送局に勤めていて、発信側です。でも届かせ方が難しいなと課題に感じています。

がんになっていない人へのいざというときのための届かせ方とがんになって必要な情報が欲しい人への届け方とは手法が異なる。

遺伝性もからんだ、両側乳がんという若干珍しい病名であったこともありますが、両方を考えて、ドキュメンタリーを作るのはチャレンジでした。(御覧になった方はどうでしたでしょうか?”HTBノンフィクションおっぱい2つとってみた” https://hod.htb.co.jp/pg/pg_op

伝えたいメッセージは『がんと生きる』こと。私も今生きてるし、死にたくないし、落ち込むこともあるけど、泣くこともあっても、倒れそうでも、そのもがきを見て、あなただけじゃない、『ひとりじゃないよ』と思ってほしいなと。

治療選択・シングルマザー・男女別姓・差別・就職困難・子育て・副作用・遺伝・薬剤治療の認可・経済的負担・コロナ・がんへのイメージ・・あげるだけでも問題山積み。これをがんを通して感じてほしいと思いました。番組の前半で手術と入院を終わらせ、その後の生活などにも時間を割きました。これは”その後”の方が悩むし、長い。医療・薬がよくなり、生存率は(データ上、一人のことではないですが)上昇。生きていく時間の方が相当長い。だからその後、どう生きていくか、乗り越えていくかの方が悩むから、患者さんじゃなくてもその事実を知ってほしい、と。

おっぱい2つ、という言葉が、興味のない人には重くなく見えるかなと思ってそうしましたし、学生さんにはこれまでのメディアのがんに対するマイナスイメージを指摘されていましたのでマイナスではない新しい何かを目指していました。(おっぱい2つとってみた のその後 テレメンタリースペシャル12月放送を御覧ください) https://youtu.be/lNHB60KgL20

情報の『個別化』はセッションの中でも話題になりました。医療監修だけじゃなくて、患者さんへの思いも含めた監修をして、という声もあがっていました。やはり、がん=死で、がん=腫れ物で・・・頑張って闘っているけど、最後は死んじゃう、お涙ちょうだい・・・な露出が多いよねと。さらにこんなに闘ってすごい人だね、と見えるようなキラキラした演出。これはメディアの責任が大きいとは思います。ディレクターもプロデューサーも学んでほしい、という痛切なご指摘。。

がんになった自分は当事者ですので、もうお涙頂戴は嫌悪感でしかない。でも前向きにどんどんがんに打ち勝っちゃいました!と主張されるのも、そこまで頑張れないよ、となんだか違和感。このちょうどよい塩梅の、みなさんの心にすうっと入ってくる感じは永遠の課題です。どうすればいいのか研究中。(是非もみなさんもこうしたほうがいいのでは、とご意見ください)

セッションの中で何度か出てきた地震や津波などの訓練のように大人もがんの教育をしていく、というプランはいいなあと思いましたし、私もできることはしたいと参考になりました。

2月6日までの1週間。様々な観点で様々な方が登壇してお話されます。
『がんのその後』『食』『教育』など興味深いタイトルが並んでいます。

ご興味のある方は是非サイトを見てみて下さい。

https://cancerx.jp/summit/wcw2021/

© HTB北海道テレビ放送株式会社