ミャンマー軍事クーデターの背景に中国VS欧州 コロナワクチン戦争もボッ発

スー・チー氏(ロイター)

ミャンマー国軍が1日、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率いる与党NLD(国民民主連盟)から政権を奪取した。スー・チー氏は首都ネピドーの自宅に軟禁されているという。軍事クーデターのバックにチラつくのが、最大の貿易相手国・中国だ。

中国の習近平国家主席は先月、約19年ぶりにミャンマーを訪問し、巨大経済圏構想「一帯一路」で東側の拠点となるミャンマー国内を開発することで合意した。その背後にあるのがロヒンギャ問題だ。

ミャンマーは、軍が少数民族ロヒンギャを弾圧していると、欧米諸国から猛非難され続け、投資や援助も鈍っていた。「人権派」と目されていたスー・チー氏でさえ、国内世論を考えると目をつぶらざるを得ない状況。

だが中国はミャンマーに巨額投資を進めている。中国もまた、ウイグルやチベットなど少数民族への人権侵害を続けていると欧米から非難され、両国はいわば“同志”。ロヒンギャ問題をテコに、中国はミャンマーを自国側に引き入れたい構えなのだ。

10年前まで長く続いた軍事政権時代、ミャンマーは中国との結びつきが強かった。中国の支援を受けた軍が、英国人の夫を持ち欧米寄りといわれるスー・チー氏らNLDを排除し、政権奪取したという見方もある。

加えて中国と敵対する米国では、バイデン新大統領が就任したばかりで、国内問題が山積み。国際情勢に目を向けている余裕がないタイミングを狙ったとも考えられる。

ミャンマーは、中国と欧米のパワーゲームの舞台とも言えよう。それは新型コロナウイルス対策でも露骨。

中国は先月12日、ミャンマーにワクチンを無償供与すると発表した。すると同27日、途上国でいち早くミャンマーでワクチン接種が始まったが、これはインドからの無償提供。英国の製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発し、インドで製造されたものだ。

今回のクーデターは、こうした激しい綱引きの一端ではないかという意見もある。

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