「野球人生が終わってしまう」 エリート街道が一転…ロッテ福田光輝が痛感した危機感

ロッテ・福田光輝【写真:荒川祐史】

昨季は開幕1軍も打率.087に終わる「自分のスイングをさせてもらえなかった」

キャンプ初日を終えたロッテの福田光輝内野手は、バットを手に持ったままインタビューの場に現れた。バッティング中心の練習メニューを終え「振り込むことができました」。2年目のスタートに充実感を漂わせる。

「とにかく公式戦で結果を出すことだけ意識して、毎日練習しています」

プロ1年目の昨季はオープン戦で3本の本塁打を放つなど存在感を見せ、開幕1軍をつかみ取ったが、プロの世界は甘くなかった。シーズンが終わってみれば1軍15試合出場にとどまり、23打数2安打で、打率.087。学生時代とは全く違う“プロの投手”に翻弄された。

「球どうこうというより、自分のスイングをさせてもらえなかったです」

オリックス・山本由伸や、日本ハム・有原航平(レンジャーズ)、楽天・岸孝之ら各チームのエースと対戦したが、全く歯が立たなかった。大阪桐蔭時代には2年夏に甲子園優勝を経験。その後、法大での4年間をへてドラフト5位でプロ入り。アマ球界ではエリート街道を歩んできたが、国内最高峰の壁は高かった。

「いいピッチャーを打つには、自分がちゃんと考えてバッティングをしていかないと。このまま自分の野球人生終わってしまうなと思いました」。まだ2年目でも、危機感が募る。今は見つめ直す時間に充てている。

「上半身でバッティングをしてしまっていたので、どんな球も追っかけてしまって、自分のスイングができなくなることが多かった」と昨季の自身を振り返る。課題を整理し、オフの段階から「下半身を使って打つ」と呪文のように反すうしながら取り組んできた。

福浦コーチに「今まで自分が考えていなかったことを教えていただいた」

首脳陣から助言も受けた。昨年はロッテのレジェンド・福浦和也2軍ヘッド兼打撃コーチからもアドバイスをもらった。「2000本(の安打)を打たれた方なので、質問しましたし、やっぱり福浦さんも『下半身で打つことが大事』と言っていました。そこを細かく、なんで下半身が大事なのか、どうやって下半身を使っていくのか。今まで自分が考えていなかったことを教えていただきました」。

井口資仁監督や河野亮1軍打撃コーチからは「打席での考え方」を教わった。これまでは初球から積極的に振りに行くスタイルで、「2ストライクからでも何も考えずやっていました」と振り返る。2人の言葉から「シンプルかもしれないですけど、(追い込まれてからは)逆方向にも狙っていくとか、考え方の部分で話をしてもらいました」と基礎を積み重ねていく。

福田光が打ち克つべき相手は“自分自身”。「そんなに上手くいくことはないと思っていたので、1年目は自分の感覚を信じて、いけるだけいってみようという感じでした。今年は考え方からしっかり自分のものを持ってやろうって決めたので、そこはたくさん考えて、たくさん練習して、自分のものにしていけたらなと思います」。感覚だけでプレーしていた自分から脱却し、昨季の経験を糧に成長することを誓う。

「この世界に来た以上は、活躍して誰もが知っている人になりたいです」

壁を破るには、振るしかない。まだまだ、振り足りない――。インタビューを終えた福田光は、ずっと握り締めていたバットを手に再び練習場へ戻って行った。

○福田光輝(ふくだ・こうき)1997年11月16日生まれ、大阪府大阪市出身。23歳。中学時代は東淀川ボーイズに所属し、全国大会で優勝。大阪桐蔭高校時代は2年夏に甲子園優勝。3年春に甲子園ベスト4。その後法大に進学し4年時には主将を務める。2019年のドラフト会議でロッテから5位指名を受け入団。176センチ、80キロ。右投げ左打ち。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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