無観客キャンプで際立つ鷹・松田宣浩の偉大さ “元気印”の不変の存在感

キャンプで笑顔を見せるソフトバンク・松田宣浩【写真:代表撮影】

緊急事態宣言下で全球団が無観客でスタートさせた今年のキャンプ

12球団が一斉にスタートさせた2021年の春季キャンプ。例年と違うのは、全てのキャンプが無観客で行われている点。新型コロナウイルスの感染拡大、政府による緊急事態宣言の影響で、ファンがいない状況で、選手たちは開幕に向けて練習を行っている。

選手にとってファン不在のキャンプは難しいものであるのは間違いない。ファンの声援、そしてファンに見られているということが力になり、モチベーションも上がるもの。それが今年はなく、気持ちの“張り”という面で異質なものになっているはずだ。

ただ、そんな状況の中でも“不変”なものがあった。それがソフトバンクのベテラン松田宣浩内野手の姿勢だ。球界きっての“元気印”、ムードメーカーとして広く認知されている松田。たとえ、キャンプが無人のスタンドの中で行われても、その元気さ、賑やかさは変わらず、その姿は偉大だと感じた。

無人のスタンドでもグラウンドに響き渡る松田の声

宮崎キャンプ2日目に行われた3箇所でのノック。松田は例年と同様にチームの先頭に立って声を張り上げていた。後輩たちがエラーをすれば、ヤジを飛ばしてチャチャを入れる。大先輩で9年ぶりに復帰した小久保裕紀ヘッドコーチがノッカーでミスをすれば、遠慮なしにいじり倒す。小久保ヘッドコーチでさえも、ミスすれば、罰ゲームとしてジャンプ10回を課されていた。

この松田の元気、そしてもう1人のベテランである川島慶三内野手に引っ張られるように、他の選手たちも声を出し、無観客でありながら、この日のグラウンドには活気が満ち溢れていた。A組が練習をするメイン球場のアイビースタジアムの声は、若手が集まるB組のサブグラウンドにまで響き、B組のそれよりも大きく聞こえるほどだった。

この日の練習を終えた松田は言う。「無観客でのキャンプは初めての経験で寂しさ、違和感はありますけど、2月1日から戦いは始まっている。無観客だからと言い訳にならない。ファンの人たちがいる、いないに関わらず、ホークスらしい野球、自分らしい野球を積み重ねていきたい」。この言葉に松田の思いがこもっていると言えるだろう。

声を出すソフトバンク・松田宣浩【写真:代表撮影】

三塁争いも意に介さず「打って、守って、走って、元気を出せば、負けるわけない」

今年は小久保ヘッドが9年ぶりにチームに復帰した。松田にとってはプロ入り2年目から、三塁手としてその背中を見つめてきた偉大な存在だ。「小久保さんの背中を見て、やはり熱くやるというのは小久保さんの姿勢を見てきたからだと思う。それは継続していけたら」。受け継いだ三塁のポジションを今まで守ってきた松田も、小久保ヘッドの姿勢をしっかりと継承している。

このキャンプでは三塁を本職とする増田珠内野手、リチャード内野手がA組に抜擢。栗原陵矢捕手も三塁に挑戦する。ただ、松田は「特に刺激はないですね。自分のやる事をやるだけ。自分の力、やってきた事を信じて、打って、守って、走って、元気を出せば、負けるわけないと思っています。三塁争いとか聞きますけど、本人は全く意識していません」と、意に介してもいない。

キャンプのたびにその存在の大きさを再認識させられる松田宣浩という男。キャンプが無観客となる中で、その偉大さはより一層、際立つ。昨季は打率.228、13本塁打と確かに不振に終わった。ただ、数字以上に、やはりチームにとって欠かせない人間なのだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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