「昭和」が大好きで1700カ所を訪問 47都道府県踏破の平山雄さんが本を出版

 埼玉県東松山市に住む平山雄さんは大の昭和マニア。全国の1700を超える昭和の面影を残すスポットを訪ね、写真に残してきた。その中から108カ所を厳選した著書「昭和遺産へ、巡礼1703景」を出版。発売前から注文が相次ぎ、既に4刷を重ねている。(共同通信=中村彰)

昭和の薫りにあふれる平山雄さんの自宅和室=埼玉県東松山市(写真は全て平山さん提供)

 平山さんは東京・大久保の団地で生まれ育った。22年前、その団地が取り壊される際に「最後にもう一度」と見に行ったところ、何とも言えない懐かしさがこみ上げてきて、いつしか昭和の面影をたどる旅をするようになった。それが高じて2005年には、1972(昭和47)年に建てられた家を見つけ出し購入、昭和のグッズに囲まれた生活を送っている。

 当初はただ自分の好きな「遊び」のつもりだったが、「人に見せないともったいない」と考え、インターネットにサイトを開設。思いのほか評判が良かったため、ブログ「昭和スポット巡り」を2012年に始めた。

山王市場通商店街=大阪市西成区

 訪れる対象は食堂、純喫茶、商店街、観光地、ラブホテルなど多岐にわたる。移動はマイカーで。運転しながらもなるべく寄り道をして「何か面白いものはないかな」と目を凝らす。基本は単独行の車中泊なので「ほんと貧乏旅行なんです」という。

 物件発掘のこつを尋ねると「感覚でしかない」との答え。「周りも含めて自分の中でピンとくるかどうか。『ドキッ』としたら、なるべく撮る」のがポイントだという。

ラブリーサロンノンノン=徳島市

 眺めたり、撮影をしたりする一方で、店の人やお客さんに気安く声を掛ける。「カウンターに地元の友達みたいな人たちがいて、ママさんと高齢者のたまり場になっている店が多いですね」と話す。入りづらいような気もするが「バンバン入っちゃいます。むしろ、そういうお店を見つけると『ラッキー』と思っちゃうくらい」と楽しげに語る。

銀座商店街=三重県桑名市

 おしゃべりの中から見えてくるのは、商店街など地域経済が衰えつつある姿だ。「『昔は喫茶店がいっぱいあったけれど、うちだけになっちゃった』とか『自分の家でならやっていけるが、借りていたら続けられない』といった話がよく出てきます」という。建物も、経営者も、お客さんも年を重ね世代交代が進まない状況をつぶさに見てきた。

純喫茶ローリエ=山形県鶴岡市

 一方で、純喫茶など古いものを再発見する若者が増えている。「僕らの感覚では『懐かしい』だけど、若い人から見ると逆に新鮮だったりするんじゃないですか」と考える。「内装が凝っていたり、異空間ぽさが受けてるのかもしれない」

 一番のお気に入りは埼玉県長瀞町にある1961年開業の宝登山ロープウェイ。「山麓駅も、山頂駅も当時のまま。頂上の昔ながらのレストハウスや小動物公園で結構遊べます。自分の中で最高の場所です」

宝登山ロープウェイ=埼玉県長瀞町

 自宅和室のこたつで話を聞いたが、4本足のテレビやラジオ、電気ポット、蓄音機と呼びたくなるようなレコードプレーヤーなどが並ぶ。電話はダイヤル式の黒電話。廊下の壁には観光地のペナントが張られ、飾り棚には70年の大阪万博の貯金箱などが並ぶ。コロナ禍で平山さんも旅を控えている。「こういう状況ですから休んでいるけど、行きたくてしょうがないです」と、収束を待ち望んでいる。

平山雄さん=埼玉県東松山市の自宅

 「昭和遺産へ、巡礼1703景」は「303 BOOKS」刊、1500円+税。

「昭和遺産へ、巡礼1703景」の表紙

 平山さんのブログ「昭和スポット巡り」はこちら。https://showaspotmegri.cocolog-nifty.com/blog/

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