中国全土で2憶台の監視カメラ
赤信号を無視して横断歩道を渡ると警告音が鳴り、渡った人物は監視カメラにとらえられ、街の大型ビジョンに顔が大写しになり、その罪を晒さらされる。画面には違反回数の累計までもが表示される。
ディストピア映画の舞台ではなく、これが中国の現実だ。
中国全土に2億台ともいわれる監視カメラを設置し、国民のあらゆる不正を見張っている。信号無視、車両の違法停車など法律違反を取り締まるほか、数万人規模の集会に紛れ込んだ指名手配犯の検挙にも役立っているという。
こんな監視体制に中国人は息苦しさや個人の権利侵害への不満を抱かないのか。「監視されてみんなが法律を守るならいい」「嫌なら違反行為をしなければいい」という発想のようだ。
監視体制はルール意識の向上のためだけに強化されているのではない。中国共産党の支配体制維持のため、党に反対する人物の取り締まりにも使われている。
2019年にはウイグル族を監視する大規模システム「一体化統合作戦プラットフォーム」(IJOP)が構築されたことを、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が中国当局の内部文書を入手して明らかにした。
監視カメラ映像をAIによる顔認証で解析。マルウェアを半強制的にインストールさせた携帯電話の中身など、あらゆる個人情報をアルゴリズム解析し、危険分子とみなされた人物を2万4千人特定。
その内なんと1万5千人を収容所に送り込んでいた。
すべてのやり取りが中共に監視されている
もちろん漢民族も監視対象だ。日本では「チャットアプリ」と紹介される中国テンセント社製のウィチャットは、日本のマイナンバーに当たる身分証番号を登録して健康管理に利用するほか、ウィチャットペイという電子マネーを使うために銀行口座も紐ひもづけられ、国民の生活全般を管理するアプリになっている。
しかも中国国内では外国製アプリは使用できないため、他に選択肢がない。関係者との連絡もすべてウィチャットで行われるため、登録していないと電話もメールもできない。
当然、すべてのやり取りは中国共産党の監視のもとにあり、会話・買い物・移動などのほとんどの履歴を握られることになる。
BBC中国特派員のスティーブン・マクドネル記者は、ウィチャットに香港で行われた天安門事件追悼イベントの写真を数枚、アップしたところ、「このアカウントは悪質な噂を広めた疑いがある」としてロックされた。
解除するには、自身の顔写真と、アプリが指定する文言を読み上げた音声データの登録が必要だった。これで要注意人物として登録されたことになる。
中国共産党の監視網は国外にも広がる。
オーストラリアの情報機関(ASIO)の本部近くに中国人が土地を買い、監視など情報収集をしていると指摘された。日本でも同様のことが起きているのではないか。