【東京新聞杯・美浦トレセン発秘話】サラブレッドは、ぼんやり見るだけでは分からないことが山ほどある。例えばアーモンドアイ。GⅠ9勝の歴史的名牝は生来、右後肢がウイークポイントだったが、記者がそれを知ったのは、すでにタイトルの半数を取った以降だった。外見からは判別が難しい、ささいな変化、個性を発見・理解する喜びは、取りも直さず取材のモチベーションになる。
さて、今週のGⅢ東京新聞杯(7日、東京芝1600メートル)にエントリーするシャドウディーヴァを少し理解できたのも、実は昨夏のGⅢクイーンSが初めてだった。
東スポ取材班は担当厩舎制を敷いており、普段の美浦なら斎藤誠厩舎の担当者に任せるが、記者が分散し、東西の厩舎が集結するローカル開催では、そんな垣根は越えざるを得ない。で、当時ぶしつけに厩舎に出向いた当方に対し、懇切丁寧に対応してくれたのが小原秀之助手だった。
「エプソムC(16着)は不良馬場も響いたが、何より体調が敗因でしょう。まだ体質が弱く、一戦ごとの消耗が激しい馬。GⅠヴィクトリアマイルからの転戦は正直、厳しかったですね。放牧を挟んだ今回は、だいぶ疲れが抜けましたが、右回りは内にモタれる癖を矯正しつつの競馬になりそうで…。中山(常総S)で1回勝った時は本当に状態が良かった分、クリアできたけど、果たして今の状態でどこまでスムーズに走れるかですね」
クイーンS時は担当者も半信半疑の口ぶりだったが、それでも結果は0秒2差の4着。改めて実力を認識した次第であった。以降は当方もシャドウディーヴァの〝ハマる鞍〟をひそかに狙ってきたが…。偶然にも斎藤誠調教師と話す機会が訪れた先週、それが今回だと確信した。
「エリザベス女王杯(8着)は窮屈な場面もあって消化不良でしたね。スムーズなら、もう少しやれたはずですよ。とはいえ、重賞タイトルを取れるとしたら、やはり思い切り乗れる左回りでしょう。前走後、ノーザンファームしがらきでの調整中も〝雰囲気はいいです〟と報告を受けたし、実際に戻ってからは雰囲気も動きも良好。以前ペタペタだった腰も、だいぶしっかりしましたよ。これなら昨年(2着)以上に走れて不思議はないでしょう」
過去3度の重賞2着はいずれも東京が舞台。リフレッシュして迎える今回こそ、待望のタイトル奪取のチャンスでは?