キックオフ<下> 「夢をつかめる場所へ」 王座奪回 復権を期す名門 高校サッカー 100回目の冬へ

11年ぶりに県新人大会を制した国見。創成館との決勝で、FW本川(中央)がドリブルで突破する=雲仙市、国見総合運動公園多目的芝生広場

 1月下旬。第99回全国高校サッカー選手権の余韻がさめないうちに開かれた県高校新人大会は、国見が11年ぶりに王座を奪回した。計4試合で17ゴール1失点。すべての試合で先制して、力強く主導権を握り続けた。冬の高校サッカー100回目の幕開けに、全国選手権優勝6回を誇る伝統校が復活の兆しを見せた。
 国見は勝てない時期も、再び頂点に返り咲くチャンスを絶えず模索してきた。プレーヤーとして現役時代に実績のあるコーチ陣をそろえ、県内外に張り巡らせたOBのネットワークを生かして有望な生徒を勧誘。「国見ブランド」を生かしたチームづくりを辛抱強く続けた。
 結果、2015年は県新人大会の決勝に進出。19年は全国選手権県大会で準優勝して手応えをつかんだ。20年はFW中島大嘉のJ1札幌入りが決定。13年ぶりに高卒プロ選手を輩出した。
 現在、指揮を執るのは赴任4年目、監督就任3年目の木藤健太。OBで元Jリーガーでもある39歳は「サッカーだけじゃなく、人として成長できる場所を目指してやってきた。魅力あるチームにならなければいけないと思ってきた。周りの方が『また国見が頑張ってるみたいだね』と見てくれるようになっているのかな」と地道な取り組みの成果を実感している。青と黄の縦じまは、全国の舞台へ着実に近づいている。
 貴重な経験を積んだ新興校、全国での勝ち方を熟知している名将、そして復権を期す名門-。追い掛ける他校も力をつけてきている。かつて「サッカー王国」と呼ばれた長崎が、再び上昇気流に乗りそうな雰囲気になってきた。
 今冬の第99回大会で1ゴールを挙げた創成館のMF岩﨑雄永は「3年間が詰まった大会」と振り返り、後輩たちに思いをつないだ。長崎総合科学大付監督の小嶺忠敏は「選手がどんどんうまくなっていく場所」と表現する。新2年生で国見の10番を背負うMF北村一真は「夢をつかんでやろうという気持ちがある」と燃えている。
 それぞれが、それぞれの思いを胸に、1年後の冬の選手権に向かっている。=敬称略=


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