逗子斜面崩落1年 同級生ら「忘れさせない」 再発防止へ願い

事故があった現場で女子生徒を追悼する住民ら=5日午前8時ごろ、逗子市池子

 神奈川県逗子市池子で斜面が崩落し、市内在住の県立高校3年の女子生徒=当時(18)=が亡くなった事故から5日で1年。この間、花束が絶えなかった現場にはこの日も、朝早くから夜まで献花する人の姿が絶えなかった。高校時代の同級生らが訪れ、「絶対に事故を忘れさせない」と思いを新たにし、再発防止を願った。

 「誰とでも話せて、みんなを元気にしてくれる人」。高校が一緒だった男性は入学時から、女子生徒が気さくに話し掛けてくれたことを思い出す。

 事故を聞いた時は言葉が出なくなり、その1カ月前に学校で聞いた「元気?」の声が忘れられないという。「元気で頑張ってるよ。そっちは元気?」。長い間、手を合わせた。

 崩落が起きた午前8時ごろには、桐ケ谷覚市長も献花し黙とう。「死を決して無駄にしない。安全なまちづくりに取り組んでいく」と決意を述べた。

 事故を忘れずに土砂災害被害を防ごうと活動するボランティア団体のメンバーら16人も訪れた。この1年、地域を回り崖に危険がないか調べ、行政に報告。マップ作りや啓発企画で再発防止に力を注いできた。

 メンバーらは献花や女子生徒の好きだった歌を歌って冥福を祈った。中学3年生の男子生徒(15)は「事故が二度と起きないよう、自分たちが活動することで伝えていきたい」。女子生徒とボランティア活動を行っていた高校3年生の女子生徒(18)は「今でも信じられない気持ちだが、思いを引き継いでいけたら」と話した。

 また、市内在住の中学3年の女子生徒(15)は姉が、亡くなった生徒と同級生で一緒に遊んだことを覚えている。「優しくて笑顔の誰にでも平等に接する人」が事故に巻き込まれたことは姉から聞いた。

 「なぜ彼女が亡くならなければいけないのか」。涙をこぼし、声を詰まらせながら「安全への意識がすごく変わった。たくさんの人が崖の危険について考え、行動できるよう、自分にできることをする」と誓った。

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