「監督として恥ずかしい」中日・与田監督が痛感する巨人との差と強化ポイント

中日・与田剛監督【写真:荒川祐史】

巨人との差は数字にも「何とか機動力を使って次の塁、次の塁に」

与田剛監督がキャンプ直前に意気込みを語ったCBCテレビ「サンデードラゴンズ」のインタビューをまとめたコラムの後編。今回も放送されなかった部分も含めて紹介しよう。解説者の井端弘和氏は2つの質問をしていた。まずは巨人、阪神とどう戦うかについてだ。【CBCアナウンサー/若狭敬一】

「もちろん、どの相手もそうですが、特に上位2チームと戦う上ではやはり走力です。去年はあまりにも走らなかった。盗塁の企図数が(両リーグで)11位。これは監督として恥ずかしいことです。ジャイアンツもタイガースも走ってきますし、逆に我々と戦う時に『あまり機動力を使わないな』と思われるだけで、もうマイナスです」

広いバンテリンドームで、一発を量産するのは難しい。

「去年はうちの選手がもう少しでホームラン、フェンスのあと1、2メートルという当たりが多かった。結局、ホームランはジャイアンツの半分ほど。得点は約100点、ジャイアンツの方が多い。それを簡単に埋めるのは容易ではありませんが、何とか機動力を使って次の塁、次の塁に行こうと。もっと足を使わないと、上位には食い込めないと思います」

足が武器と言えば、岡林勇希という若竜がいる。

「高卒2年目で初の1軍キャンプ。貪欲に取り組んでほしいです。『大島(洋平)さん、平田(良介)さん、どいてください』とレギュラーを奪うくらいの気持ちでね。コーチをどんどん引っ張って、独占するくらい図々しくやってもらいたい。機動力野球を目指す中で、彼にはすごく期待しています」

中日・石垣雅海【写真:荒川祐史】

与田流の危機管理は“万能選手”の育成…石垣や高松にも期待

さらに井端氏は、主力選手が怪我をした場合の危機管理プランを尋ねた。与田監督は2通りのアプローチを考えている。

「まずは最初から(高橋)周平のバックアップはこの選手、(ダヤン)ビシエドの控えはこの選手ときっちり決めて準備する方法です。もう1つは、1人の選手を複数ポジションで使う方法。それは危機管理だけでなく、選手の能力を高めることにも繋がります。例えば、根尾(昂)。打撃が良くなって1軍に上げたいとなった時に『ショート以外は守ったことがありません』では困る。だから、内野も外野もさせました。2軍で少しでも守った経験があれば『万全ではないけど、大丈夫』と1軍の試合に送り出せるんです」

万能選手候補として2人の名前が挙がった。

「石垣(雅海)と高松(渡)もそう。内野手で入って来た選手を外野でも使って、1軍で何か起きた時にすぐ使える選手にしておきたい。そういう選手が最終的にオプションだったり、秘密兵器になったりすると思っています。両方からアプローチして、しっかり準備したいですね」

中軸の構想にも迫った。

「新外国人選手の(マイク)ガーバーはクリーンアップで考えています。ビシエドが4番。そして、阿部(寿樹)と福田(永将)がどう出てくるか。一昨年の秋キャンプで阿部には『4番を打て』と発破をかけて、去年はホームランが2桁まで増えました。長打力はアップしたので、中軸に入るチャンスはありますね」

ここで監督自ら鍵を握る選手の話を切り出した。

「私がキーに挙げたいのは平田(良介)です。彼が『3番、5番を打ちますよ』と。やはり優勝には欠かせない男ですから、復調を期待しています。ただ、2番の収まりがいいという話もありました。右打ちもうまい。去年は私が色々な打順を試しながら、何とか調子を上げようとしましたが、少し苦労したかもしれません。ただ、守備も走塁も素晴らしい。キャプテンは周平ですが、『肩書きはないけど、俺がキャプテンだ』という思いでプレーして欲しいです」

中日・木下拓哉【写真:荒川祐史】

正捕手は木下拓哉?「期待しているからこその厳しい評価」

続いて、先発陣。昨年11勝のエース大野雄大に次ぐ8勝を挙げた福谷浩司の評価を聞いた。

「交代を告げる時にちょっと怖いくらいの表情がたくさん見られました。『完投するんだ。みんなに負担をかけないんだ』というチームに対する愛情や自分の責任を全うしたい気持ちを強く感じます。今年は2桁勝てるようにサポートしたいですね」

柳裕也には進化を望んだ。

「まだ柳から『開幕、行かせてください』という話を聞きませんが、それくらいの意思は伝わってきます。『大野さんには負けられません』みたいなね。彼は苦手な部分を少しずつ克服してきましたが、さらに武器になるもの、これだけはというものを1個作ってほしいです」

若手の台頭も必要だ。

「去年、怪我をした梅津(晃大)、小笠原(慎之介)、清水(達也)、山本(拓実)、終盤に頑張った勝野(昌慶)。彼らが安定した形でローテーションに入ってくれば、大きな連敗は免れるはずです。やはり先発ピッチャーがゲームを作らないと。今、言ったメンバーには期待を寄せています」

正捕手は木下拓哉と思いきや、指揮官はまだ決めていなかった。

「確かに木下は終盤よく頑張りました。でも、途中までは全くと言っていいほど駄目でした。期待しているからこその厳しい評価です。ピッチャーができないものをさせるのがキャッチャー。それがやっと終盤にできるようになった。では、なぜできるようになったのか。そこを考えた上で木下にはもう一度チャレンジャーの気持ちでキャンプに臨んでもらいたい。郡司(裕也)も加藤(匠馬)もベテランの大野(奨太)もいるし、アリエル(マルティネス)にもチャンスはある。木下には危機感を持って欲しいですね」

昨年8年ぶりのAクラスに入った与田竜。今年は頂点を目指す。

「優勝という目標は、より力強く思うようになりました。『楽しく』という言葉を誤解されたくないんですが、野球を皆さんに楽しんでもらえるシーズンにしたい。好きで始めた野球がプロに入った途端、苦しくなることがあります。でも、原点に帰って、大好きな野球をみんなで楽しむ。それが一番優勝に近づくんじゃないかと思うようになりました。楽しむためには何が必要か。そこはプロですから、分かっています。準備です。しっかりと準備したいと思います」

26日の打ち上げまで無観客が決定した今年の沖縄キャンプ。昇竜復活へ。指揮官は緻密に周到に準備を進めて行く。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋
大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会
社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。
<現在の担当番組>
テレビ「サンデードラゴンズ」毎週日曜12時54分~
ラジオ「若狭敬一のスポ音」毎週土曜12時20分~
「ドラ魂キング」毎週金曜16時~

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