NPB球団が「女子チーム」を持つ意義と希望 小林雅英氏語る「12球団に広がって」

昨年発足した埼玉西武ライオンズ・レディース【写真:編集部】

クラウドファンディングで活動資金を募る選手も

昨年創設された「埼玉西武ライオンズ・レディース」に続き、阪神の女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガース Women(ウィメン)」が今年2月から活動をスタートさせる。女子野球の現状、NPB球団が女子チームを運営する意義などを、2019年に日本女子プロ野球リーグの投手総合コーチとして所属全チームの指導にあたった元ロッテ投手、小林雅英氏に聞いた。

ライオンズ・レディースは早速、昨年10月に千葉で行われた「第15回全日本クラブ選手権」で初出場初優勝を果たした。メンバー中、里綾実(さと・あやみ)投手は野球日本代表「侍ジャパン」女子代表として国際大会でMVPを3度獲得した実績を誇り、女子プロ野球選手として小林氏の指導を受けたこともあるが、2019年限りで愛知ディオーネから構想外通告を受けた。2020年に予定されていた女子野球W杯(コロナ禍で今年3月に延期=メキシコ・ティファナ)出場を目指し、クラウドファンディングで活動資金を募集。目標額の300万円を超える資金を得て、昨年は毎週末に生活拠点の愛知から車で埼玉の練習場へ通い、技術を磨いたという。

タイガースWomenにも小林氏から指導を受けた元女子プロ野球選手が含まれている。4月以降、全日本女子野球連盟や関西女子硬式野球連盟主催の大会に参加する予定だ。

ちなみに、全日本女子野球連盟が主催する最大の大会は、毎年8月の「全日本選手権」。昨年はコロナ禍で中止となったが、2019年の第15回大会にはクラブチーム20、大学6、高校6チームが参加して同じ土俵でトーナメントを戦い、尚美学園大学が5年ぶり5度目の優勝を飾っている。

2019年に日本女子プロ野球リーグの投手総合コーチを務めた小林雅英氏【写真:荒川祐史】

女子は小学校低学年以下の子供の指導にも向いている

小林氏は「西武と阪神が女子のために練習の場を作り、トップチームと同じユニホームを着せてくれるだけでも、選手たちのモチベーションは上がり、子供たちの目標になる」とうなずき、「女子野球の普及には時間がかかる。高いお金を出してくれる必要はなくて、損得なしで今のような支援を継続してくれることが重要だと思う」と付け加えた。願わくば、「これが12球団に広がってくれたら。全国のクラブチームでリーグ戦を行った上で、日本シリーズのようなものをNPB主催でやってもらえたら理想的」と言う。

女子野球が盛んになれば、NPBを含む球界全体に好影響を与えるのは間違いない。「女子野球選手が増えれば、将来的に野球好きのお母さんが増える。自分の子供に野球ボールを握らせてくれる可能性が高くなり、野球人口の底辺拡大につながる」というのが小林氏の持論だ。「僕らの子供の頃とは違って、放っておいても数多くの子供が野球をやってくれる時代ではない。子供に興味を持ってもらえるように、こちらから働きかけないといけない」と訴える。

女性は初心者の指導にも向いているという。小林氏は少年野球教室の指導者を務めた経験から「小学生の高学年になれば、元プロ野球選手に教わることを喜んでくれるが、5歳から10歳くらいまでの、これから野球をやってみようか迷っているような子供にとっては、僕ら元プロ選手は単なる“ゴツイおっさん”で、腰が引けてしまう」と指摘。「その点、女子が教えた方が当たりが良くて、子供が寄ってくる。食いつき、雰囲気も良くなる」と見ている。

まだまだ長い道のりだが、女子野球を育てることは球界全体の夢をはぐくむことにつながっていく。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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