「職場にきちんと出勤しろ」命令を北朝鮮の労働者が嘲笑う理由

北朝鮮で「反社会主義、非社会主義」と言えば、韓流の視聴、密輸、ワイロなど、当局の考えるところの社会主義にそぐわない行為を指す。1992年10月に金正日総書記(当時)が取り締まりを指示したが、取り締まれど取り締まれど次々に現れ、今に至るまで根絶に至っていない。

金正恩総書記は、先月5日から12日まで北朝鮮・平壌で開催された朝鮮労働党第8回大会で、改めて反社会主義、非社会主義を取り締まる方針を示した。

全党的、全国家的、全人民的に強力な教育と規律を先行させて、社会生活の各分野で現れているあらゆる反社会主義的・非社会主義的傾向、権力乱用と官僚主義、不正・腐敗、税金外の負担などあらゆる犯罪行為を断固阻止し、統制しなければなりません。

正当な理由なく、6ヶ月以上派遣された職場に出勤しなかったり、1ヶ月以上離脱した者は、3ヶ月以下の労働教養をさせる。罪状の重い場合には、3ヶ月以上の労働教養をさせる。

そうならないために、働く人々は、勤め先に一定の罰金を払って出勤日数を減らしたり、早引けしたりする「8.3ジル」を行い、空いた時間を商売に当てて生計を立ててきた。機関・工場・企業所、そしてその幹部は、従業員に給料を払うのではなく、逆に「8.3トン」を取り立てるのだ。

現金収入が必要なのは、企業や上役とて同じ。「8.3ジル」は誰にとっても都合の良い慣習だが、それを取り締まるとあっては、「労賃(月給)はくれないくせして、なぜ職場に出勤しろと言うばかりなのか」(情報筋)との不満の声が上がるのも当然のことだろう。

ただ、現実にそぐわない法律、命令は施行当初は厳しい取り締まりが行われるが、時間が経つにつれ有名無実にしてしまう北朝鮮社会のこと、「8.3ジル」禁止令も長続きしないだろう。

当局がいかに現実を見ていないかという別の例として、情報筋は「若者たちの間で早婚する現象がひどくなっている」とのくだりを挙げた。当局のプロパガンダとは異なり、出産、育児、教育インフラが立ち遅れ、経済難が一向に改善しないことから、結婚、出産を避けようとする状況が長年続いているのが北朝鮮の現実。幹部の講演会を聞いた人々は「今の世の中で、誰が早く結婚しようとするのか」とあざ笑っている。

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