相模湾6海岸、侵食「深刻」 台風相次ぎ、鎌倉では10年で20メートル後退も 県が対策見直し

近年の台風の影響もあり、侵食が進む鎌倉海岸・七里ガ浜地区。海沿いに国道134号が延びる=2021年1月

 相模湾沿岸部で続く海岸の侵食がこの10年で深刻化し、鎌倉、茅ケ崎、大磯、小田原、藤沢、湯河原の計6海岸で砂浜の一部が失われるなどしたことが、神奈川県の調査で分かった。高波を伴った台風が相次ぎ、想定以上に侵食が進んだという。その一方、県が保全策に力を入れてきた横須賀海岸などは砂浜が回復したことから、県は3月にも対策計画を改定。砂浜の再生や維持に向けた取り組みを見直す方針だ。

 改定作業中の「相模湾沿岸海岸侵食対策計画」で、状況の悪化を踏まえ最も深刻な海岸に新たに位置付けるのは、鎌倉海岸・七里ガ浜、茅ケ崎海岸・菱沼海岸、大磯海岸・大磯西、小田原海岸・前川の4地区。

 現行計画の策定時点(2011年3月)と比べて砂浜が狭まるなどしており、「波消し機能が不足している」と判断した。鎌倉・七里ガ浜はこの10年で海岸線が最大約20メートル後退し、茅ケ崎・菱沼海岸は対策を講じないと、10年後には海岸線がさらに10メートル後退すると予測している。

 加えて、07年の台風で大規模な侵食被害を受けた二宮海岸と、小田原海岸・国府津の両地区が、引き続き最も深刻な海岸に分類される見通しだ。これらの海岸に比べ、砂浜の機能はある程度保たれているものの、藤沢・片瀬西浜と湯河原・吉浜でも10年間で侵食が進んだという。

 各地で状況が悪化した原因として県が挙げるのは、台風による高波の影響だ。

 11~14年には、平塚沖で5メートル以上の波高を記録した台風が毎年来襲。最近も相次ぎ、17年の台風21号や19年の台風19号などで被災する海岸が広範囲に及んだ。鎌倉・七里ガ浜や茅ケ崎・菱沼海岸では、道路の陥没やサイクリングロードの崩落などがたびたび発生。急峻(きゅうしゅん)な海底谷があるため砂が流出しやすい小田原の国府津や前川は、越波により住宅などに被害が出た。

 高波の影響が生活圏に及ぶケースが目立つようになった一方、状況が改善した海岸もある。侵食が続いていた茅ケ崎海岸・中海岸はダムに堆積した砂を人工的に運び込む養浜が奏功。目標としてきた奥行き50メートルの砂浜を取り戻しつつある。横須賀海岸・秋谷も、砂より大きい礫(れき)を投入する対策で砂浜が回復し、平塚海岸では波を弱める離岸堤の整備が効果を上げている。

 県砂防海岸課は「10年間の状況変化を踏まえ、地元の理解を得つつ、養浜を中心とした取り組みをさらに進めていきたい」と今後の方針を説明。突堤などの構造物で砂の流出を防ぐ手法は、隣接する別の砂浜が狭まるといった影響を及ぼす恐れもあるため、慎重に検討する考えだ。

 三浦市から湯河原町にかけての12海岸を対象とした県の侵食対策計画は、砂浜の防護機能や侵食の度合いなどに応じて四つのタイプに分類。葉山海岸・一色下山口や藤沢海岸・辻堂、小田原海岸・東町などは、最も安定的したタイプに位置付けられている。

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