2020年度「負債1,000万円未満の倒産」調査

 2020年度(20年4月‐21年3月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、1月までの10カ月で529件(前年同期比24.1%増)に達し、前年度の513件を上回った。このペースで推移すると、2000年度以降で最多の2009年度(566件)を抜き、最多記録の更新する可能性が出来てきた。負債1,000万円以上の企業倒産が低水準で推移するなか、支援効果が浸透しない小・零細規模の息切れが浮き彫りになった。
 産業別では、新型コロナ感染拡大の影響が深刻な飲食業を含むサービス業他の256件(前年同期比36.1%増)が最多。負債1,000万円未満の倒産の約半数(構成比48.3%)を占めた。
 業種別では、コロナ禍で休業や時短営業が直撃した飲食業(51→91件)、織物・衣服・身の回り品小売業(9→11件)が増加した。一方、巣ごもり需要の特需が恩恵となった飲食料品小売業(17→9件)は減少し、明暗を分けた。
 原因別では、「販売不振」が392件(構成比74.1%)で最も多かった。過小資本で事業環境の悪化に耐性がぜい弱な「事業上の失敗」が29件発生した。
 形態別では、破産が512件(前年同期414件)と大半を占め(構成比96.7%)、小規模事業の経営再建の難しさを示している。
 2月2日、政府は10都府県の緊急事態宣言を延長した。コロナ禍の収束が見えず、当初から過小資本で、経営基盤がぜい弱な小・零細規模の経営環境は厳しさを増している。
 国や自治体、金融機関による資金繰り支援策で負債1,000万円以上の企業倒産は抑制が続く。だが、負債1,000万円未満の倒産は増加をたどり、小・零細企業、商店が抱える切実な問題に対し、弾力的な支援の検証が必要になっている。

  • ※本調査は2020年度(2020年4月-2021年1月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

年度倒産 10カ月で529件、すでに前年度の件数を超える

 2020年度の負債1,000万円未満の企業倒産は、1月までの10カ月間で累計529件(前年同期比24.1%増)と急増している。すでに2019年度の513件を超え、2000年度以降で最多だった2009年度(566件)を上回る可能性が出てきた。
 四半期別では、緊急事態宣言の発令で外出自粛、営業時短などが直撃した2020年4-6月期は168件(前年同期比51.3%増)と急増し、さらに7-9月期も187件(同36.4%増)と大幅に増えた。「GoToキャンペーン」が始まった10-12月期は141件(同7.6%増)と増加率が縮小し、2021年1月は33件(前年同月比29.7%減)と減少に転じた。ただ、再度の緊急事態宣言の発令に加え、後継者問題も重しになるなか、コロナ禍の厳しい経営環境で売上減少から抜け出せない小・零細企業は多い。なお、新型コロナウイルス関連倒産は48件(構成比9.0%)だった。

1000万未満

産業別 10産業のうち、8産業で増加

 産業別では、小売業、不動産業を除く8産業で、前年同期を上回った。
 最多は、サービス業他の256件(前年同期比36.1%増、前年同期188件)。倒産に占める構成比は48.3%で、ほぼ半数を占めた。「食堂,レストラン」(12→21件)、「酒場,ビヤホール」(10→16件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」(6→19件)などの飲食業や「理容業」(ゼロ→5件)などで増加した。
 次いで、建設業76件(前年同期比7.0%増)、小売業53件(同13.1%減)と続く。
 減少率が最も高い小売業は、「織物・衣服・身の回り品小売業」(9→11件)が増加したが、「飲食料品小売業」(17→9件)が減少と、対照的だった。

形態別 消滅型の破産が96.7%

 形態別では、破産が512件(前年同期比23.6%増、前年同期414件)で最も多かった。倒産に占める構成比は96.7%(前年同期97.1%)だったが、前年同期より0.4ポイント低下した。
 次いで、「民事再生法」が11件で、すべてが個人企業の小規模個人再生手続きで、法人はなかった。
 このほか、「取引停止処分」「特別清算」が各3件。
 負債1,000万円未満は、体力が乏しい小・零細企業がほとんど。業績低迷が続くなかで、新型コロナによる業況悪化も加わり、先行き見通しも立たないことから消滅型の破産を選択している。
 また、長年にわたり休眠状態が続き、個人破産にあわせて法人を処理するケースも散見される。

原因別 販売不振が7割以上

 原因別では、「販売不振」が392件(前年同期比30.2%増、前年同期301件)。倒産に占める構成比は74.1%(前年同期70.6%)で、前年同期より3.5ポイント上昇。
 次いで、「他社倒産の余波」が50件(前年同期比11.1%増、前年同期45件)。
 また、「事業上の失敗」が29件(同7.4%増、同27件)。業歴が浅く、事業基盤を築くまでには至らず、業績低迷から抜け出せなかった企業も多い。
 そのほか、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が19件(同46.1%増、同13件)。また、代表者の死亡・病気などを含む「その他」は、前年同期と同件数の19件だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は414件(前年同期比31.4%増)で、約8割(構成比78.2%)を占めた。

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