連載② 流通最前線「岐路を迎えたコンビニ業界はどこに向かうのか」

コロナ禍やドラッグストアの進出を受け、コンビニ業界は生き残りをかけた新たな道を模索している

コンビニエンスストア業界は今、転機を迎えている。昨年は巣篭もり消費の直撃を受けた上、ジワリと領海侵犯するドラッグストアとの競合が激しくなっており、既存店売上高も低迷しているからだ。コロナ禍が終息すればコンビニに客足は戻ってくるのか──。

コンビニが顧客に利用されているか否かのバロメーターにチェーンの「既存店売上高」の前年同月比較がある。昨年(2020年)は最大手のセブン―イレブンは水面上に浮上する月も散見されが、2位のファミリーマート、3位のローソンはいずれもコロナの感染拡大以降、水面上に浮上することはなかった。

コロナの感染拡大でコンビニ首脳は決算会見の席上で一様に厳しい表情だった。「(オフィス街など)事業所立地の店舗は影響を受けた」(セブン―イレブン・ジャパンの親会社、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長)、「(コロナの)感染拡大は大きなインパクト」(ローソンの竹増貞信社長)とコンビニの首脳は異口同音にこう話した。

オフィスでのリモートワークが進み、会社に出社する機会が減ったサラリーマンやOLが「コンビニでの購買の機会を減らしたため」というのがコンビニ不振の原因とみられている。

もちろん、コロナ禍でこうしたことにより、来店客数が減っているのは事実だろうが、どうもそれだけではなさそうだ。コンビニはすでにコロナ禍以前より既存店売上高は低空飛行が続いている。それはコンビニ同士との競争もあるが、食品を扱うドラッグストアとの競合の激化が一段と進んだことがある。

「例えば道路を挟んで同じチェーンが正面からぶつかっているというケースはよくあることですが、それに加え最近はドラッグストトアとの競合も激しい」とある大手コンビニチェーンの加盟店のオーナーはこう話す。

ファミリーマートは「数」によらない展開へ舵を切り始めている

コンビニ大手は従前は年間1000店、1500店と大規模な出店競争に明け暮れてきた。ところが一昨年あたりから出店数もトーンダウン。例えばセブン―イレブンの18年2月期は838店の純増(出店から閉店を差し引いた数)だったが、19年2月期は616店、20年2月期はついに40店になった。

「もう数(出店数)は追い求めない」。昨年の決算会見でファミリーマートの社長の沢田貴司氏はこう話した。もはや「数はすべてを癒す」という考え方によらない方針だ。ファミリーマートの2021年2月期の出店計画は「具体的な計画数値は定めない。現在の規模を維持できるように出店する」(沢田氏)として、大幅に新規出店数を減らす方向だ。

大手3社はこれまで大量の出店計画に忙殺され、加盟店対策が御座なりになっていたことは否めない。その結果として大手チェーンの一部加盟店が本部の指導を無視して自主的に時短営業を強行する事態も発生、営業時間をめぐって加盟店と本部に軋轢が生じていた。

コンビニチェーンはこうした低迷状態、踊り場を脱出するためセブン&アイ傘下の米セブンーイレブンが現地の石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」部門を210億ドル(約2兆2200億円)という巨額を投じて買収、米国強化にカジを切り国内の低迷を補う体制作りに布石を打った。

2位のファミリーマートも伊藤忠商事の完全子会社となってタッグを組み、新コンビニ像を模索する。ローソンは今のところ静観する構えだが早晩、次の一手を打ってくる可能性はある。岐路を迎えたコンビニ業界はどこに向かうのか。

流通ジャーナリスト 青山隆
流通専門誌、大手新聞社記者を経て、流通ジャーナリストとして活動中。青山隆はペンネーム。

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【連載 流通最前線①】コロナ禍で今後生き残っている流通の業態はどこか(2021年2月1日)

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