新潟県上越市の旧バロー空き店舗にディスカウントスーパー出店決定で周辺の競争が激化

上越モール外観

新潟県上越市に存在したスーパーマーケット「バロー」の空き店舗に、大黒天物産株式会社(岡山県)が展開するディスカウントスーパー「ラ・ムー」が今春に出店することが決まったが、そのことで周辺に集積するスーパーやコンビニエンスストアが対抗策を練っており、人口減少が進む中での顧客獲得競争が激化することが予想される。

旧バロー上越モールは2008年にオープンしたが、2020年4月にバロー(岐阜県)が撤退して、「上越モール」に名称変更された。「上越モール」は、みずほ信託銀行(東京都)が所有し、不動産投資顧問業のオリックス不動産投資顧問株式会社(東京都)が管理運営を委託されているが、2020年5月から、実際の運営は外資系商業施設運営管理業のJLLモールマネジメント株式会社(東京都)が行っている。

JLLモールマネジメント株式会社の担当者は、にいがた経済新聞の取材に対し当初は「食品に限らず誘致活動をしている」と説明していたが、実際は食品を中心とした店舗「ラ・ムー」がキーテナントとして入居することになった。「ラ・ムー」の新潟県内店舗は大黒天物産の子会社、株式会社西源(長野県)が展開し、新潟県内では亀田店(新潟市江南区)、燕吉田店(燕市)、長岡愛宕店(長岡市)につづき上越モール店は4店目となる。

上越市の地元住民からは「やっとテナントが決まり、買い物にはありがたい」という声が聞かれる一方で、上越モール周辺には食品スーパーの「ナルス鴨島店」、野菜や精肉、総菜も充実する「クスリのアオキ鴨島店」、「セブンイレブン上越子安店」が集積しており、上越市高田地区でも屈指のスーパー激戦区であることから、「ラ・ムー」の出店で顧客獲得競争に拍車がかかることは間違いない。

こうしたスーパーの集積は、上越モールがある鴨島・子安地区には新潟県立看護大学があり、学生が多く住んでいることや、団地開発による新興住宅地でもあることが要因にあると思われる。

激化する競争の中、各社はどのように個性を出していくのか

通常、小売業が他店に対抗するには、価格戦略や品ぞろえの充実、会員カードでの囲い込み、接客力の強化などが考えられるが、各社はどう出るのか戦略を聞いた。

「ラ・ムー」を展開する株式会社西源の総務課担当者は「当社は新潟県内では3店舗あり、競合しているのは長岡でも同じだ。価格とプライベートブランドでやっていくだけ」と強気の姿勢を見せている。

一方、「ナルス」を展開するアクシアルリテイリング株式会社の山岸豊後専務執行役員は「品目によっては価格を下げるものもあるが、サービスを含めて基本を徹底していく」と話し、「クスリのアオキ」を展開する株式会社クスリのアオキホールディングスの本社経営企画室は「特に今のところ戦略は考えていないが、店舗での対応になる。具体的には、価格政策や会員カードのポイント付与での販促はあるかもしれない」と話した。

「ラ・ムー」がエブリデイロープライスを掲げて低価格戦略を推進する中、対抗する各社は価格の見直しのほかに、サービス力で待ち構える格好となる。「ナルス」はレジ係員が行う袋詰めサービスが好評であり、これらのサービスで差別化を図るというのが当面の戦略であり、一方「クスリのアオキ」は会員カードのポイントサービスが好評で、週2回ポイントが3倍になる曜日を設定しており、その日は駐車場が一杯になるほか、レジも行列するほどだ。

「上越モール」はかつて「バロー」が失敗した場所でもあるが、異なる戦略を持つ「ラ・ムー」出店によって、鴨島地域の商圏がどう変化するのか、注目である。

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