『私は確信する』未解決事件の裁判にのめり込んでいく主人公

(C)Delante Productions - Photo Severine BRIGEOT

 タイトル通りの映画だ。「私は確信する」。何を? 無実であること、冤罪であることを。2000年にフランスで実際に起きた未解決事件の映画化なのだが、犯人探しや事件の真相に迫るという側面は二の次。だから、サスペンス映画と呼んでいいのかも怪しい。本作が機軸を置いているのは、あくまでも主人公の揺るぎない“確信”である。

 事件の概要は、こうだ。大学教授の妻が、3人の幼い子供を残したまま失踪し、教授が妻殺害の容疑で裁判にかけられる。確たる証拠はなく、遺体すら見つかっていないため、一度は無罪となるが検察は控訴。映画で描かれるのは、2010年に行われた第二審の行方だ。主人公は検事でも弁護士でもなく、シングルマザーのシェフ。息子の家庭教師が夫妻の娘だったことから、プライベートを犠牲にしてまで裁判にのめり込んでいく。本作の見どころは、まさにここ。次第に狂気すらまとうようになる彼女を見る映画なのだ。

 彼女がなぜ教授の無実を確信するのかが、説明されないところがポイント。だから、彼女の猪突猛進ぶりが際立つ。そのエネルギーに圧倒され、弁護士とのやり取りに一喜一憂させられる。また本作は、法廷シーン、二人の会話、彼女が証拠を得るために電話録音を聞き続けるシーンが大半を占めるので、視覚的なメリハリにどうしても乏しい。それを、あの手この手の工夫やアイデアで補う演出努力にも好感が持てる。★★★☆☆(外山真也)

監督:アントワーヌ・ランボー

出演:マリーナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ

2月12日(金)から全国順次公開

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