【レビュー】そこは上下に広がる恐怖の閉鎖空間、珠玉のシチュエーションスリラー『プラットフォーム』

懐かしくは名作『QUBE』などにも連なる、不条理な閉鎖空間を舞台としたシチュエーションスリラーが公開中だ。

その空間は前後左右には広がらない。ひたすらに上下に、縦方向に広がり続ける。

各階層の部屋には中央に四角の穴があり、各部屋に収容されるのは皆訳ありの人間2名。

その空間に持ち込めるのは各自が選んだ1つの物だけ。

1日の決まった時間にはその穴を上から食べ物を載せた台(プラットフォーム)が降りてくる。

主人公はある朝ある階層の部屋で目覚める。彼は果たしてこの閉鎖空間から無事脱出することができるのか。

圧倒的な縦の空間設定は明らかに外の広い世界全体についての暗喩・風刺になっている。

その点で本作は、単に不安や恐怖心を煽るそこいらのシチュエーションスリラーとは一線を画していると言っていい。

食べ物は上から降りてくるため上の階の人間から手をつけることになり、当然に下の階層には十分に行き渡らない。

全体のことを考えた善意もまたその全体にはとても行き渡らない。

ふと気付くと、既に現実的に格差が存在するこの世界においてその「格差」を埋めようとするあらゆる努力や行為のことを考えていた。

主人公に関わる人物たちの行動原理、主人公自身が強いられる選択・決定。

非日常の世界設定における極限状態だからこそ、目を背けたいほどに生々しく炙り出される人間の本性、利己と利他。

ただ、この世界に実際に極限状態が存在しないと思ってるのは、比較的上の階層でぬるま湯に浸かってる自分達の勘違いなのだろう。

本作の特殊な縦の空間は、まさに深刻な飢えや犯罪や戦争が未だに無くならないこの世界の縮図だ。

この映画を観て鼓動を早めた後に、自分は世界に存在する現実の格差に一体どのように折り合いをつけているのか、忙しく過ぎ去る日常で少し立ち止まって考えてみるのもいいかもしれない。

『プラットフォーム』

■監督:ガルダー・ガステル=ウルティア
■出演:イバン・マサゲ、アントニア・サン・フアン
■配給:クロックワークス

©BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE

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