ダイヤル回して手を止めた… 小林明子「恋におちて」背徳のピアノイントロ20秒 1985年 8月31日 小林明子のシングル「恋におちて」がリリースされた日

80年代ヒット曲 “イントロ秒数徹底調査” 1985年のシングルTOP100篇

1985年 シングルTOP100のイントロ秒数は?

リマインダーで取り上げている1978年~1991年までの14年分を、1年ごとに年間シングルランキングTOP100のイントロ平均秒数を調査し、その結果を紹介していく連載企画。

第1回で1980年、第2回で1990年を調査したところ、“年を重ねるごとにイントロ平均秒数も長くなるのでは?” という仮説が見事に裏切られる結果に。果たしてこの先、どんな結果が待ち受けているのか?

第3回の今回は、“1985年” を調査します。その年間ランキングTOP10のラインナップと調査結果がこちら。

1位 ジュリアに傷心 / チェッカーズ(18秒)
2位 ミ・アモーレ(Meu amor é…) / 中森明菜(17秒)
3位 恋におちて -Fall in love- / 小林明子(20秒)
4位 Romanticが止まらない / C-C-B(16秒)
5位 あの娘とスキャンダル / チェッカーズ(3秒)
6位 飾りじゃないのよ涙は / 中森明菜(16秒)
7位 SAND BEIGE -砂漠へ- / 中森明菜(16秒)
8位 俺たちのロカビリーナイト / チェッカーズ(10秒)
9位 悲しみにさよなら / 安全地帯(4秒)
10位 天使のウィンク / 松田聖子(15秒)
※(カッコ)の数字はイントロの秒数

調査方法は、年間シングルランキングTOP100にランクインした曲のイントロ秒数を、0秒、1~2秒、3~10秒、11~20秒、21~30秒、31~40秒、40秒以上… の7つの長さに分けて集計していきます。1985年の結果をグラフにすると、こうなります!

11~20秒と21~30秒の合計が79%と約8割。イントロが極端に長い曲、短い曲は少なかったです。平均秒数は19.2秒。前回、調査した1990年と比べると、平均秒数は3.1秒短い。1980年と比べると、0.3秒長いという結果でした。3回の調査結果で、時代を遡れば溯るほど平均秒数が「長くなる」ではなく、「短くなる」ことがわかりました。さらに面白くなってきましたね。

イントロが「40秒以上」の長かった曲は――
20位 赤い鳥逃げた / 中森明菜(46秒)
41位 六本木心中 / アン・ルイス(44秒)
61位 長良川艶歌 / 五木ひろし(42秒)

ラテンサウンドが印象的な「赤い鳥逃げた」(中森明菜)と、歌謡ロックの金字塔といっても過言ではない「六本木心中」(アン・ルイス)の2曲は、「イントロ」だけで曲の特徴をつかむことができる素晴らしいアレンジの曲。

イントロが「長い」ヒット曲は、短い曲に比べて「余白が多い」ので、ダンスや合いの手の準備といった、余白に、サウンドと歌以外の印象的なパフォーマンスが入る曲が多いです。今回の調査で見つけた新しい発見です。

電話端末機器の自由化がスタートした1985年に相応しいフレーズ

年間3位の小林明子「恋におちて -Fall in love-」は、昭和を代表するピアノイントロの名バラード曲です。TBSのドラマ『金曜日の妻たちへⅢ・恋におちて』主題歌に起用され、オリコンシングルチャートで7週一位を獲得、95万枚のヒットを記録しました。

作詞を担当した湯川れい子と、小林明子本人の作曲で描いた、タイトル通り禁断の「恋におちて」いく女性の歌詞とメロディにアレンジを加えたのは萩田光雄。ヒット請負人として、決して派手ではないこの曲を、売れる曲にしてほしいと依頼され、曲がポップスだったので抵抗なくピアノアレンジを完成させたそうです。

1985年は、電話端末機器の自由化がスタートした年。黒電話といわれるダイヤル式の電話が、プッシュホン式、コードレス式など多様化していくタイミングで、「ダイヤル回して 手を止めた」という素晴らしい名フレーズのこの曲がヒットしたというのは、必然だったのかもしれません。

小林明子「恋におちて」ため息のように響く20秒のピアノのイントロ

「ため息」のような美しく儚いピアノの音色が響くこの曲のイントロ秒数は20秒。以前、私はカラオケで人気の「デュエットソング」のイントロ秒数を調査したことがあるのですが、「デュエットソング」は、イントロ秒数が20秒前後の曲が非常に多いです。

■ 居酒屋 / 五木ひろし・木の実ナナ(18秒)
■ ふたりの大阪 / 都はるみ・宮崎雅(19秒)
■ 銀座の恋の物語 / 石原裕次郎・牧村旬子(19秒)
■ 別れても好きな人 / ロス・インディオス&シルヴィア(19秒)
■ ふたりの愛ランド / 石川優子とチャゲ(19秒)
■ 都会の天使たち / 桂銀淑&堀内孝雄(20秒)
■ 今夜は離さない / 橋幸夫・安倍里葎子(20秒)
■ 愛が生まれた日 / 藤谷美和子・大内義昭(21秒)
■ 3年目の浮気 / ヒロシ&キーボー(21秒)
■ 北空港 / 浜圭介と桂銀淑(21秒)
■ 男と女のはしご酒 / 武田鉄矢・芦川よしみ(22秒)

20秒という時間は、複雑な男と女の関係に生まれる、2人にしかわからない「間」を表現している時間なのかもしれません。

「ダイヤル回して 手を止めた」時間も、20秒だったのでは!?

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カタリベ: 藤田太郎

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