衆院選のタイミングはワクチン次第か~中国・インド・ロシア製のワクチンも輸入を検討すべき(歴史家・評論家 八幡和郎)

明治の国会開設以来、任期満了選挙はわずか

令和3年は総選挙の年である。前回の第48回衆議院議員総選挙は、2017年(平成29年)10月22日投票だったので、任期満了選挙だとすれば、そのころだ。ただし、私の「歴代総理の通信簿」(PHP文庫)から明治19年の第一回総選挙からの総選挙一覧表を掲げているが、任期満了総選挙はまれなのである。

1908(西園寺公望首相)、1921年(清浦奎吾首相)、1936年(岡田啓介首相)、1942年(東条英機首相。戦争のために任期が1年間延長されていた)、1946年(幣原喜重郎首相)、1976年(三木武夫首相)2009年(麻生太郎首相)だけである。

三木内閣はロッキード政局のなかで主導権確保のために早期の総選挙を希望していたが、党内各派から解散を阻止された。麻生内閣は、敗北が予想される状況のなかで、少しでも引き延ばして状況の好転を期待して引き延ばして任期満了になったが、状況は悪化するばかりで、自民党は歴史的な敗北を喫し民主党政権が発足した。

普通は、内閣は自分たちにもっとも有利なタイミングを選んで解散したいのだから、任期満了選挙は与党にとって屈辱的ともいえる。たとえ、十分な議席をもっていたとしても、選挙によって、党内でも自派の議員を増やせるし、また、負けなければ、政局運営でも信任を得たということで、総理は党内の消極論が多くても総選挙に踏み切ったほうが賢明だ。

解散を恐れなかった安倍晋三の勇気は岸信介譲り

そういう意味で、もっとも華々しい成功を収めたのは、安倍晋三前首相である。そもそも、安倍晋三の選挙好きは、祖父の岸信介元首相譲りである。左派・リベラル系のメディアからは強権主義というレッテルを貼られがちな彼らだが、この選挙好きはそうしたイメージが誤りであることを証明している。

岸信介は東条英機内閣の閣僚にノーバッジで登用されたのちの1942年の総選挙に、東条首相から立候補する必要なしと言われたのを振り切って、政治家なら選挙の洗礼を受けるべきだといって強行立候補した。

岸内閣時代の1957年の選挙は、自社二大政党の55年体制になって初めての選挙だったが、強気に戦い、予想をはるかに上回る議席を獲得した。

安倍前首相も、2012年の総選挙で勝って政権獲得したのち、2014年、2017年にやや苦しいといわれる状況のなかで、選挙に踏み切り、それが長期政権につながった。

それに対して、菅義偉首相は選挙には、極めて慎重だ。麻生内閣時代に側近として早期の総選挙に反対し、それが歴史的敗北につながった。また、今回も驚異的な支持率だった就任直後に解散に踏み切るように多くの与党幹部が進言したのを振り切って、「実績を見てから評価して欲しい」という美学にこだわった。

これは、どうも間違った選択だったようで、コロナは第三波が押し寄せてくるし、東京五輪はどうなるかわからない。

東京都議会選挙・ワクチン・オリパラ

時期としては、7月4日に東京都議会議員選挙が行われる。公明党は都議会議員選挙に全国から動員をかけることになっているので、極端に同時期の選挙を嫌うので、常識的には、4月25日の衆参両院補欠選挙と同時にやらなければ、7月9月下旬に行われる自民党総裁選挙あたりまで考えにくい。

衆参両院補欠選挙については、そこで負けると政権への打撃が大きいという配慮もある。 また、開会式:7月23日~閉会式8月 8日という東京五輪、開会式8月24日~閉会式9月5日との日程調整も難しい。

コロナについては、ワクチンの接種が進めば、大流行の可能性は減るだろうから、お粗末な厚生労働省や医療界ののろまな言い分を聞きすぎる族議員の田村厚生労働大臣でなく河野太郎大臣に担当を変えて勝負に出たのは正しい。

PCR検査をいくらしたところで、平常生活には戻れないし、特効薬など世界のどこでもめどなど立っていない。ファクターXなど何かあるかも知れないが、広く認知されているものはない。いろんな仮説が出ては裏切られているものも多いのだから、国家的にそれに賭けるべきではない。

世界的にワクチンだけが確実にインフルエンザ並みの対処で社会生活を可能にするとだいたいのコンセンサスがあるのである。というよりは、武漢での最初の流行のときから、ワクチンができるまでの辛抱だったはずなのだ。

残念ながら、日本の製薬業界は、インド、中国、ロシア並みの成果も出せてないし、海外製のワクチンの確保も遅れた。昨日は、海外ではファイザー製1本から海外では6本とっているのに、厚生労働省の用意した注射器では5本しか取れないという大スキャンダルが発覚した

はっきりいって、これは大失政で、政権交代の理由になってもおかしくないのだが、野党やマスメディアは、あいかわらず、PCR真理教、国際的には公序良俗に反する言説とされているワクチン懐疑説がアフリカの呪術師を信じている地域並みに蔓延していて、政府与党がまだしも前向きなのだから、マイナスになっていないという皮肉な幸運だ。

日本では職場でワクチンをするように圧力が高まるだろうから、遅ればせながら、接種は進んでいくだろうし、9月以降、冬前なら絶好の選挙日和だ。

東京五輪は、来年に延期できるならいいのだが、日本側もIOC側にも問題が多い。2024年への延期は、それは、フランスがOKすれば可能だが、すでに準備が始まりスポンサー探しも始まっているし、コロナを克服した欧州にとって記念碑的な大会にできるものを簡単に譲ってくれるとも思えない。

私は、今年できるものはするが、一部の種目などは、来年に回すような解決などありうるのでないかと思うが、果たして、柔軟な頭で検討はされているのだろうか。

いずれにせよ、私はワクチンが行き渡るかが政局の鍵だと思う。そんななかで、遅れを取り戻すためには、中国製、インド製、ロシア製の導入も検討対象にいれたらと提案して(「中国製のワクチン導入も選択肢にいれるべき:アゴラ記事」)、ヒステリックな反対意見も頂いているが、シンガポールや平均寿命世界一の香港でも中国製入れているのに、なんで毛嫌いするか理解できない。

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