松浦魚市場 再整備事業 “閉鎖型”荷さばき場 「鮮度、衛生面」改善図る

水揚げから選別、競り、出荷まで一連の作業が屋内でできる新しい荷さばき場=松浦魚市場

 長崎県松浦市が2017年度から進めてきた「松浦魚市場」(同市調川町)の再整備事業が3月末に完了、4月から本格的に運用を始める。新施設の荷さばき場は、水揚げから選別、競り、詰め替え、出荷まで一連の作業が屋内でできる“閉鎖型”。鮮度の保持はもちろん、衛生面の向上による高品質・高度衛生管理型魚市場として、国内向けの出荷に加え、将来はEUなど海外への輸出も目指す。

 同魚市場は1979年に開場。アジ、サバを中心に94年には約13万5千トンの水揚げ量があった全国有数の魚市場。しかし近年、温暖化による異常気象で出漁日が減少し、漁場での外国漁船との競合なども影響し、水揚げ量は大きく減少している。2020年は約6万トンにとどまった。
 開場から約40年が経過した同魚市場の施設は老朽化が進行。競りや選別をする荷さばき場は開場時に建設された「魚舎」の1階にあり、海沿いに防風フェンスはあるものの外壁がない“開放型”。潮風や日差しが容赦なく入り込み、手先がかじかむ真冬や炎天下の真夏は過酷な作業環境となっていた。温度や湿度の管理もできず、鮮度保持や衛生面からも改善が求められていた。
 また、「魚舎」の2階に点在する関係業者の事務所では、雨漏りにも悩まされる状況だったという。
 市が再整備に取り掛かったのは友広郁洋・前市長時代。卸売りの西日本魚市や買受人、運送会社などの関係者と協議し実施計画を策定した。しかし、財政負担が大きいことから16年度に施設規模を見直し、17年度から荷さばき場の整備を最優先に工事に着手。吹きさらしだった荷さばき場は閉鎖型の最新鋭施設(延べ床面積計約1万平方メートル)に生まれ変わった。
 また、屋外をフォークリフトで運搬していた荷さばき場から買荷保管積み込み所「おさかなドーム」までの間に、「仕向け作業所」(同約2千平方メートル)を新設し、外に出ることなく魚を運搬する動線を確保した。3階建ての事務所棟(同約3600平方メートル)も新築して、関係業者の事務所を一カ所に集め、利便性の向上も図った。再整備にかかった総事業費は約75億円。
 この他、運搬船の大型化に対応するため、県の港湾整備事業で新たに2基の浮桟橋を設置。効率的な水揚げ作業に対応する。
 市水産課は「新年度中にHACCP(食品衛生管理の国際基準)の認定を受け、将来の輸出を見据えた施設としていきたい。市場では約800人が働いている。作業従事者の意識改革や衛生管理教育体制の構築に努め、新しい施設の機能を十分に生かし、付加価値を高めていきたい」と話した。

再整備が進む松浦魚市場全景。奥の3基の桟橋の先に“閉鎖型”の新しい荷さばき場が見える=松浦市調川町(小型無人機ドローンで撮影)

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