ドリカムの直球ストレート「うれしい!たのしい!大好き!」恋に恋するバラ色世界 1989年 9月1日 ドリームズ・カム・トゥルーのセカンドアルバム「LOVE GOES ON…」がリリースされた日(うれしい!たのしい!大好き! 収録)

女性たちの等身大でリアルな恋愛物語を歌うドリームズ・カム・トゥルー

80年代、恋の神様といえばもちろん、ユーミンこと松任谷由実であり、その座は不動のものだった。そんな80年代最後の年、1989年にデビューしたのがドリカムことドリームズ・カム・トゥルーだ。

ユーミンの描く恋愛の歌詞がオシャレで、かつ文学的だとするならば、ドリカムは “直球勝負”。日常に溢れる女性たちの等身大でリアルな恋愛物語を描いてみせた。ドリカムの登場直後は、よく女の子の間で「ドリカムとユーミン、どっちが好き?」と比較して語られることも多かった。

とはいえ、音楽性のまったく違うユーミンとドリカムを比較するというのもなんとも的外れでナンセンスな話だが、そうした雰囲気に拍車をかけた一因が両者のアルバムリリース時期にあったと思う。

ドリカム、アルバムリリース時期でユーミンに闘いを挑む?

冬の寒さを感じ始めると、「あー、そろそろユーミンのアルバムが発売だね」なんて自然に思ってしまうほど、毎年冬はユーミンのシーズンであり、新作の発売はもはや風物詩のようでもあった。

ところが、そこへ名乗りを上げたのがドリカムだ。セカンドアルバム『LOVE GOES ON…』から6thアルバム『MAGIC』まで、毎年11月から12月上旬にかけてアルバムをリリースしていくさまは、まるで道場破りのようだった。ユーミンと競うなんて新人としてはとんでもない暴挙にも感じられたが、それだけ当時のドリカムの勢いはすごかったし、自信にも満ちていた。年に一度、ユーミンとドリカムが数日違いでアルバムを発売していたこの時期、CDショップでバイトをしていた身としては大わらわだった。

特に1992年11月14日にドリカムが5thアルバム『The Swinging Star』を、27日にはユーミンが『TEARS AND REASONS』をリリースした時は、ユーミンが初めて販促グッズを付け、勝負をかけたようにも感じられて印象深かった。

とはいえ、こうした動きはあくまで大人たちの事情であって、アーティストにとっては、さほど意識するようなことではなかったのではないだろうか。

恋する乙女は無敵!「うれしい!たのしい!大好き!」のまっすぐな思い

そんなドリカムは、とにかくデビューから売れに売れまくった。1989年にリリースしたセカンドアルバム『LOVE GOES ON …』は180万枚以上を売り上げ、以後8thアルバム『LOVE UNLIMITED∞』まで連続ミリオンを記録。

デビューアルバム『DREAMS COME TRUE』ではどちらかというと切ない恋の曲が多かったが、セカンドアルバム『LOVE GOES ON …』は、もうオープニングからキラキラモード全開。1曲目の「うれしい!たのしい!大好き!」はイントロから「ねぇ、みんな聞いて! 私、大好きな人に出会ったの!」とばかりに、世界の中心で愛を叫ぶようなハイテンション。

今ではドリカムの代表曲のひとつだが、実はシングル曲ではなく、アルバムの一収録曲というのだから改めてアルバムのクオリティの高さに驚かされる。

 友達にはうまく言えない
 このパワーの源を
 “恋をしてる” ただそれだけじゃ
 済まされないことのような気がしてる

好きな人ができると、朝、目が覚めた瞬間から世界は輝き、夜、寝る瞬間に至るまで頭の中は好きな人でいっぱい―― それまでよどんでいた世界が一気にバラ色に。「これって異次元に飛ばされちゃったんじゃないの? 今ならどんなことだって乗り越えられるわ!」…そう、恋する乙女は無敵なのである。

この曲のまっすぐな思いは、“恋に恋している” とも言えなくもないが、こんなフルスロットルな浮かれ具合だって恋愛のリアルだ。目をハートマークにして友達に “恋バナ” を聞いてもらっても、うまく伝わらないこの思い…。聴かされる友達の立場にしても、目の前の圧倒的なパワーにタジタジ…。すべて恋愛 “あるある” だろう。

どこまでもリアルで乙女心に忠実、ドリカムの恋愛ストーリー

さて、2月14日は好きな人に愛の告白をする日。そう、バレンタインデー! けれど時代は変わり、友チョコ、ご褒美チョコ… と別のイベントに様変わりしようとしている。それでも、この日をきっかけにして、勇気を出して好きな人に告白しようとドキドキしている人も、きっといるはず。

もしかしたら、その勇気の先には、「うれしい!たのしい!大好き!」のような世界が待っているかもしれない。そしてアルバムでは、この曲に続く2曲目に「うれしはずかし朝帰り」が準備されていて、恋するあなたを待っている。―― ドリカムの恋愛ストーリーはどこまでもリアルで、乙女心に忠実だ。

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