なぜ高卒新人2人を“1日限定”でA組に呼んだのか? 鷹・工藤監督の3つの思惑

ソフトバンク・井上朋也(左)と牧原巧汰【写真:福谷佑介】

「スイングも素晴らしかったので1度見てもらいたいという思いがあって呼びました」

第3クール最終日となった11日のソフトバンクの宮崎キャンプ。そこで注目を集め、存在感を発揮したのは、この日1日限定でA組に参加したドラフト1位ルーキー井上朋也内野手と同3位の牧原巧汰捕手だった。

ウォーミングアップから主力の集うA組で先輩たちとともに汗を流した井上と牧原巧。フリー打撃、そして実戦形式のシート打撃にも加わり、1軍でプレーする先輩投手のボールを直に体感した。牧原巧は昨季11試合に登板した杉山一樹投手から左前に安打を放ち、井上も思い切ったスイングを披露し、工藤公康監督ら首脳陣を唸らせた。

全体練習終了後には先輩たちの前で1人1人、挨拶した2人。報道陣にも対応し、井上が「スピードもコントロールもキレも全然違って、これが1軍のピッチャーなんだなと感じました。この経験をB組にいっても、高い気持ちを持ってやっていきたいです」と語れば、牧原巧も「すごく楽しい時間を送れました。オーラがあってA組ってこういうところなんだと感じられました。世界が違う感じがしました」と初々しく振り返っていた。

そもそも、この2人の“1日限定”のA組合流が実施され、その狙いはどこにあったのか。工藤公康監督がこの日の練習後に語っている。

まずは2人のポテンシャルを首脳陣が感じ取ったところにある。工藤監督は「(小久保)ヘッド含めて見てみたいということで、スイングも素晴らしかったので1度見てもらいたいという思いがあって呼びました」と語る。B組での練習、シート打撃などの姿、能力を見て、1軍首脳陣の目でもチェックしてもらおうとした。

井上、牧原巧ともに大いに刺激になったようで「いち早くここでやれるように」

もう1つが、期待のルーキーに1軍のレベルを知ってもらい、そして自分の課題を感じてもらうことにある。指揮官は「感じてもらうということですね。思った以上にロングティーでもスイングできていた、大したもんだと思って見てました。キャンプで1番疲れたと思いますけど、これが普通になっていかないといけない。こうしよう、ああしようと気づいてくれたら」と、今後の糧にすることも狙った。

そして、ルーキーたちのモチベーションのアップにもなる。「彼らにとっていいモチベーションになってもらえたらな、と。元気に明るく声も出ていた。最初は緊張していたようですけど、元気にやってくれたので呼んで良かった。今日の気持ちを忘れないでやってほしいですね」と指揮官。A組の雰囲気を味わい、感じることで、新人たちの向上心により一層、火をつけようという狙いもあった。

現にA組を味わった2人からは「今日経験したことをB組でも続けていって、高い向上心を持って取り組んでいきたい」(井上)、「いち早くここでやれるようにB組に戻っても頑張っていきたい」(牧原巧)と意欲的なコメントも飛び出し、その表情はやる気と希望に満ちていた。荷物をA組のロッカーからB組のロッカーに運ぶ際にも、晴れやかな表情だった。

1日限定だったルーキーのA組参加だが、そこで2人はその非凡さを発揮した。この経験を糧に大きな成長を遂げ、いつの日か1軍の舞台で2人が輝く姿を楽しみに待ちたいものだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2