カネ集めで手腕発揮も…世界の失言王・森喜朗会長の栄光と転落

森会長はついに「東京2020」トップの座から引きずり下ろされた(代表撮影)

ついに“カネ辞任”に追い込まれた。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が女性蔑視発言で世界中から非難を浴びたことを受けて辞任を決意。後任は、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)が受諾した。就任当初から「カネ集め」に手腕を発揮し、史上最高額のスポンサー料をゲットしたが、最後はスポンサーに見放される皮肉な結末に…。“世界の失言王”の栄光と転落の舞台裏を追跡した。

激動の1週間だった。森会長は3日に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言。その直後から国内外で猛反発が起こった。翌4日の謝罪会見で発言を撤回したものの、質問した記者に“逆ギレ”して世間の怒りの火に油を注いだ。

ここから森会長は徐々に追い詰められていく。大会ボランティアや聖火ランナーの辞退者が続出し、事態を重く見た国際オリンピック委員会(IOC)は「問題は終わった」という声明を修正して「完全に不適切」と非難。連日のように世界中の五輪関係者、アスリートから集中砲火を浴びた。さらには“天敵”の一人、東京都の小池百合子知事(68)がIOCのトーマス・バッハ会長(67)、橋本聖子五輪相(56)、森会長との4者会談のボイコットを表明したこともボディーブローのように突き刺さった。

本紙が既報したように続投ならスポンサーの“撤退ドミノ”も浮上する中で、極め付きは米放送局NBCと大スポンサーの反発だ。IOCの重要な資金源となるテレビ放映権料を担うNBCは「彼は去らねばならない。聖火を落とした」とコメント。史上最高額の約3500億円(計68社)を拠出したスポンサー企業も痛烈に森会長を批判した。最後は最高位スポンサー・トヨタ自動車の豊田章男社長(64)による「誠に遺憾だ」との異例の声明がダメ押しとなり、ついに土俵を割った。

そもそも、森会長が組織委のトップとして不動の地位を築けたのも「カネ」が理由だった。招致活動時代を知るA氏は「(東京五輪の)2016年招致に失敗した森さんは、20年招致では本流から外れていました」と話す。当時「評議会議長」の肩書はあったが、実質的な中心人物は元JOC会長の竹田恒和氏(73)と元ミズノ社長の水野正人氏(77)だった。

「森さんは悔しい思いで2人を敵対視していた。でも、招致が決まったら自分が組織委トップになろうと狙っていた。政権与党(自民党)の長老ですから、カネを自由自在に操れる自信があったんです」(A氏)

フタを開けると、思い描いた通りの展開になった。組織委の立ち上げ当時、関係者との密談で「会長は誰がいいか?」と相談された森会長は「俺がやる」と回答。A氏は「周囲は腰を抜かしていましたよ。まさか自分から言いだすとは思いませんでした」と振り返る。

晴れて会長となると、さっそく招致メンバーの主流派を排除した。そして自分の息がかかった地元(石川県)にゆかりある一流企業と巨額なスポンサー契約を締結。これまで培った人脈を生かし、次々と巨額の拠出金を獲得していった。

A氏は「最近はよく森さんの(功績などを評価する)擁護論も耳にしますが、あの人はカネだけの男。元総理という看板でカネ集めしただけ。いつも密室でコソコソとセコイやり方をする。美談にしてほしくはない」と怒り交じりに訴えた。

カネで地位を得たものの、最後はカネが決定打となって失脚。東京五輪は「人生最後の仕事。まさに天命」とまで話していたが、身から出たサビで野望が消滅。気心知れる川淵新会長の下、“院政”を敷き居座るのなら、同情の余地はない。

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