世界一美しいオープンカー、レクサスLCコンパーチブルの惚れ惚れする開閉ショー

レクサスブランドのフラッグシップクーペであるLC500、これをさらに進化させ新しい世界観を創造したのが2020年6月に追加設定された「LC500Convertible(コンバーチブル)」です。世界一美しいオープンカーと言われるこのモデルの魅力を試乗を通してお伝えします。


日本導入前から高い人気

LC500コンバーチブルはまず最初に2019年1月のデトロイトモーターショーにてコンセプトカーとして発表されました。その後、2019年11月のロサンゼルスオートショーにて世界初公開。日本は少し遅れて2020年6月18日に発表されました。元々ベースとなるクーペモデルであるLCの市場投入が2017年3月ですからそれなりに時間は経っていましたが、筆者も2019年の東京モーターショーで展示されたコンセプトモデルを見る来場者の期待を肌で感じた記憶があります。

前にも記事で触れましたが、このモデルを市場投入する際、特別仕様車として60台限定のLC500 Convertible “Structural Blue”を発売しました。元々レクサスのオーナー向けに40台、残り20台を一般向けに抽選販売を行う方式だったこともあり、瞬く間に売り切ったこともマーケティング上の戦略としては上手いと感じていました。

ハイブリッドの設定が無い理由

前述したクーペモデルであるLC500には5リッターV8と3.5リッターV6のハイブリッドシステムを搭載するエンジンが設定されています。

搭載される5リッターV6エンジン。477PSという圧倒的なパワーに世界初の10速ATを組み合わせます

しかしコンバーチブルモデルはV8のみの設定です。レクサスのエンジニアに立ち話でサクッと話を聞いたところ「ハイブリッド車の場合はバッテリーを搭載するスペース等が必要ですが、コンバーチブルの場合はトップを収納するスペースが必要になります。2シーターにすれば可能かもしれませんが、その考えはありませんでしたのでV8エンジンのみとなっています」とのことでした。

もちろん、販売上でも利益率は高くても台数自体は多くは見込めないモデルですからあまりバリエーションを増やすのも考え物です。また同じエンジンを搭載するクーペと比較してもコンバーチブルは車両重量が100kg前後増えてしまうので動力性能に余裕があるV8の設定は必然的とも言えたはずです。

見られることを意識した特別な仕立て

ボディカラーは写真の「ホワイトノーヴァガラスフレーク」を含め11色を設定します

コンバーチブルモデルの定員はクーペ同様4名です。先に言ってしまうとリアシートに大人が乗車するのはあくまでも短時間の緊急用と考えるべきです。シート自体も直立気味ですし、1人または2人の大事な移動時間を演出するためのクルマと考えると、ここはジャケットや転がらない荷物を置くスペースと言えるでしょう。

一方で内装全体、さらにフロントシートの「仕立て」は絶品と言えるものです。ルーフの開閉についての話は最後のお楽しみとしても、コンバーチブルはルーフを開けた際の車外からの見え方についてもこだわっています。

フロントシートには上質なセミアニリン本革シートを採用、実はクーペモデルの上位グレードにもセミアニリン仕様は標準装備されていますが、コンバーチブルは専用設計となっています。

コンバーチブル専用に設定されたセミアニリン本革シート。シート空調も装備されます

具体的には見た目としてはシートの肩口からサイド部へのキルティング加工やシートのサイド部への処理も特別なものになっています。極めつけはシートのクッションの「たわみ量」も変えることでクーペより快適性を高めるなど、まさに専用仕様としての仕上がりとこだわりを持っています。

インパネ周辺に関しては質感の高さはもちろん、インフォテインメントシステムも10.3インチの大画面を手元にあるリモートタッチで操作できるなどレクサスの考えに基づいて設計されています。

見て触れる部分にも強いこだわりがあるLC500ですが、実際試乗した際に「ここは良いな」と感じたのは意外にもシフトレバーでした。

シフト自体は電子制御化されているので操作は非常にスムーズです。そしてそのシフト自体を握った際の感触がたまらなく良いのです。レクサスによれば無垢の金属を革で包み込むというインテリアイメージとのことですが、触れた際にスッと手のひらに馴染む独特な感覚はこれまでの高級車ではあまり記憶にありません。もちろんそこからの操作は前述した通りですが、もしレクサスの販売店に行って実車に触れる機会があったら、この部分はぜひチェックして欲しいと思います。

15秒の美しい開閉ショー

そして何よりもコンバーチブルの一番の売りである電動ソフトトップの開閉を行ってみました。

ソフトトップとリアクォータウインドウのスイッチはタッチパッド後ろに設置されます

まずルーフ自体はソフトトップが採用されていますが、これらにありがちな閉めた際のシワなどはほぼ皆無に近く、ピンと張られたルーフは本当にソフトトップなのか、と思わせる程です。何よりもルーフを閉じた状態でクーペモデルとは異なるデザインの演出に成功しており、1台でオープンカーとクーペの両方の世界を堪能できる魅力的な仕上がりです。

さてルーフの開閉はセンターコンソールにあるタッチパッドのすぐ後ろにあるスイッチで操作します。この手の装備はスイッチが剥き出しになっていることがほとんどですが、LC500の場合はしっかり蓋が付いています。誤動作防止もありますが、前述したように車外からの見え方も考えると蓋があることはちょっとしたこだわりとしても良いことだと感じました。

開閉時間は約15秒。ルーフを閉じても美しいフォルムはそのままに快適性を高めます

スイッチを入れるとそこにはこれまでの電動ルーフの動きとはひと味違う世界を感じることができました。それは「動きが機械的でない」ことです。少し回りくどい言い方ですが、これまでの電動トップは最初から最後までその動きがまさに機械による動作、抑揚のようなものが無かったのです。

しかしLC500コンバーチブルはレクサスによれば「システム自体に手を加えることで、ルーフの動き出しから動作の切り替え時に0.2秒程度の「タメ」を設けることで緩急がついた筆運びにも似た優雅な動き」としているそうです。

実際、外から見ても動き出しはスムーズで、途中で思わず「ウッ」と唸ってしまうほどのタメ自体は存在しました。そして最後もスムーズにルーフを収納し完了。車内はもちろんですが、車外から見るとその動きに正直魅了されます。

この動き自体は専用の油圧ポンプを二重構造にすることで動作時の静粛性にも配慮しているとのこと。またルーフの開閉自体も時速50km以下であれば行えます。人に見せるためのルーフ操作ではありませんが、信号待ちなどでスッと動かせばその周辺がLC500コンバーチブルのステージになってしまうほどの華のある装備と言えるほどです。

加速と音が織りなす官能の世界へ

走りに関してはクーペよりも100kg前後重いことでコーナーからの再加速時などの立ち上がりでは一歩見劣りする部分はあるかもしれません。しかし、それを補うだけの十分過ぎるほどのパワーをコンバーチブルは搭載しています。5リッターのV8エンジンは477PS(351kW)の最高出力と540N・m(55.1kgf・m)の最大トルクを発生します。これをダイレクトなフィーリングを持つ10速ATで操るわけですが、アクセルを踏み続けることでエンジンの回転は車速に合わせてスムーズ、いやパワフルに上がっていきます。これにプラスされるのが「音」の部分です。まるで精密機械に魂が宿ったような音の高まりはドライビングの楽しさを演出してくれますし、一方でアクティブノイズコントロールによりこもり音を低減したり、ルーフやシートにも吸音機能を持たせてあります。

メーター内に表示される開閉状態。開き始めはルーフがまだ頭上にあることがわかります

また気になるオープン時における風の巻き込みについてもウインドディフレクターが市街地では効果的です。ただオープン状態で高速道路などを走るのであればディーラーオプションで設定されているウインドスクリーンをオススメします。価格は13万2,000円と決して安くはありませんが、オーナーになるならばこの位の出費は余裕なのかもしれません。

最後にLC500コンバーチブルは目に見えない部分に軽量素材や補強を行うことでオープンモデルとは思えないほどの高い剛性やバランスを実現しています。車両価格は富裕層でなければ手が出ない1,500万円ですが、将来のリセールバリューの高さや希少性、また輸入車とは違う世界観を堪能したい人には魅力的な1台であることは間違い無いのでしょう。

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