田中将大が重視する「音よりフレーミング」 “キャッチング革命”は起こるか?

楽天・石原彪(左)と田中将大【写真:宮脇広久】

5年目の石原が田中将に質問「アメリカにはどういうキャッチャーが多いですか?」

田中将大投手の8年ぶり復帰をきっかけに、楽天から“キャッチング革命”が起こるかもしれない。沖縄・金武キャンプ中、メジャーでの経験を元にブルペンで再三「ミットの音よりフレーミング」と強調。捕手陣、首脳陣も反応している。

田中将はこのキャンプで初めてブルペン入りした7日には、正捕手格で3年目・24歳の太田。2度目の7日には9年目・26歳の下妻を相手にピッチング。そして3度めの12日に相手を務めたのは、5年目で21歳の石原彪捕手だった。京都翔英高時代には通算42本塁打を放ち“京都のドカベン”の異名を取った若武者。172センチ、96キロの巨体から何ともユーモラスなムードを漂わせている。

ピッチング開始当初から、石原は明らかに緊張気味。偵察に訪れていた他球団スコアラー陣の間から「緊張してるよ…ミットの音が全然鳴っていないもの」と声が漏れたほどだった。それでも、ワンバウンドしたスプリットを体で止め、田中将から「ナイス、ストップ!」と声をかけられるなど、徐々にほぐれていった。様々な変化球、コースを交え74球。石原は「『キャッチングは問題ない』と言われてホッとしました」と胸をなでおろした。

田中将は「こちらから押し付けることはしないが、聞かれれば何でも答える」方針で、連日若手投手から質問を受けては、丁寧にアドバイスを送っているが、それは相手が捕手でも同じ。この日のピッチング終了直後、石原がブルペン内で田中将に様々な質問をぶつけた。「アメリカにはどういうキャッチャーが多いですか?」と尋ねた時には、「ミットの音よりフレーミング」との答えが返ってきたという。

光山バッテリー兼守備戦略コーチも「いずれ日本でもそれが主流になっていくのかな…」

「『いずれ日本でもそれが主流になっていくのかな…』という話を光山さん(バッテリー兼守備戦略コーチ)としました。どうなっていくかはわかりませんが、自分の引き出しにはしていきたいです」と石原は修得を誓った。

フレーミングとは、際どいゾーンの球を球審にストライクと判定させる技術のことだ。かといって露骨にミットを動かせば、かえって「ボール」と判定されるばかりか、球審の怒りを買うリスクもある。決して気安く使える代物ではない。

田中将は初ブルペンの際にも、太田に「音のことは気にしなくていいから、際どいコースをストライクに取ってもらえるようなキャッチングをしてくれ」と要望。これには、現役時代にメジャーで2桁勝利を2度マークするなど5年間で39勝を挙げている石井一久GM兼監督も「アメリカの捕手は座布団に包まれたような『ボス』という音をさせる」とうなずいた。日本では、捕球の際にミットを高らかに鳴らして投手を気分よくさせるのも、捕手の技術の内とされるが、投手が実際以上に好調と思い込むのも、それはそれで裏目に出るケースがある。

いずれにせよ、マー君の復帰をきっかけに巻き起こったキャッチングを巡る議論は、日本球界にとってプラスにこそなれ、マイナスになることはないだろう。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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