【米男子ゴルフ】中学をドロップアウト コロナ感染でデビューできなかった27歳が初出場

カマイウ・ジョンソン(ロイター=USA-TODAY)

中学をドロップアウト。念願のツアーデビュー戦はコロナ感染で出場取り消し――。そんな経歴を持つカマイウ・ジョンソン(27=米国)という選手が今週の米男子ツアー「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」で話題になっている。

2日間通算のスコアは14オーバーの単独最下位で予選落ち。下部ツアーにあたる「コーンフェリー・ツアー」にすら出たことのないジョンソンにとって初体験のツアーでの緊張やセッティングのタフさがあっただろうとはいえ、普通なら特に話題になることもなくコースを去る選手のひとりだが、その波乱の経歴が大会前から注目されていた。

日本の中学2年生にあたる8年生で学校をドロップアウト。祖母、母と6人の兄弟で暮らす家がたまたまパブリックのゴルフ場に隣接していたため、何となく棒を振って目の前を通り過ぎていくゴルファーのまね事をする日々を過ごしていた。

そんなある日に、コース所属の女子プロ、ジャン・オーガーさんがかけたひと言がジョンソンの人生を変えた。

「あなた、不法侵入よ」

これで会話が終わっていたら、ゴルフとは縁がない人生だっただろう。だがオーガーさんは続けて「もしくは、家に帰る前にボールを打ちなさい」と言って9番アイアンと1かごのボールを渡した。

「彼女のおかげで、僕は人生を意味を見つけることができた」とジョンソンはゴルフのとりこに。するとオーガーさんはさらに1日1ドル(約105円)でコースの施設を自由に使えるようにした。

おかげで腕を上げたジョンソンは18歳で「フロリダ・オープン」に出場。その後はプロとしてミニツアーで勝利を重ね、主催者推薦を受けた「ファーマーズ・インシュアランス・オープン」(1月28~31日、カリフォルニア州トーリパインズGC)で念願のツアーデビューをするはずだった。

ところが開幕直前の検査で新型コロナウイルス感染が発覚し、出場はまさかの取り消し。拠点のフロリダから大陸横断してきたジョンソンには、あまりに無情な〝仕打ち〟だった。

それでも捨てる神あれば拾う神あり。この境遇を不憫に思った、来月18日開幕の「ホンダ・クラシック」(フロリダ州PGAナショナル)が主催者推薦の1枠をジョンソンに与えることを発表。さらに今週の「ペブルビーチ」にも主催者推薦で出られることになり、ついに念願のツアーデビューを果たした。

2日間で奪ったバーディーはひとつだけ。11ボギーに2つのダブルボギーという内容を「ボールをひとつもなくさなかったし(OBなどの)ペナルティーもなかった。グリーン周りで苦戦したのが原因」と振り返る。

「キース・ミッチェル、リッキー・ファウラーはじめ、皆すごく親切にしてくれて、素晴らしい経験ができた。たくさんのことを学んだし、ここからは上がっていくしかない」と話したジョンソン。かけがえのない体験を糧にして、来月またツアーの舞台に戻ってくる。

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