「けったいな町医者」被写体の長尾和宏 ナレーションの柄本佑と在宅の現場を回る 「すごい感性の方」

「けったいな町医者」の写真をもっと見る

これまでに2,500人を看取ってきた尼崎の在宅医・長尾和宏さんの姿を収めたドキュメンタリー映画「けったいな町医者」の初日舞台挨拶が行われ、被写体となった長尾和宏さんと毛利安孝監督が登壇した。

長尾さんを密着する際に自分の中でルールを決めていたという毛利監督。「僕自身はフィクション畑の人間で、ドキュメンタリーは初めてでした。フィクションの映画と違い、段取りが出来ないので、長尾先生の2ヶ月間を切り取ることだけ考え、とにかく長尾先生の後ろをついていきました。何が起ころうとも、『もう一度やってください』だとかは言わない。患者さんのご自宅に初めて入って、足場にいろいろ物が置いてあっても、それをどかすという行為もしないということを自分に課してやったので、すみません、カメラがブレて見づらいところもあったかと思います」と説明した。

完成したドキュメンタリーの感想を聞かれた長尾さんは、「私は被写体でもあるんですけれど、患者さんが主人公です。(撮影はしたものの、本編に使わせて頂きたいと許可取りに行った際)承諾を得られなかった方もほとんどで、ご承諾をいただいた患者さんとご家族に深く感謝を申し上げます。旅立たれた方々が映っているんですから、ありえない映像だなと思いました。(本作を見たら)在宅医療、尊厳死とはどういうものかとわかっていただけると思います。美談が多い中で、私はけったいとしか言いようがないと思います」と述べた。

長尾さんの著書が原作の「痛くない死に方」(2月20日劇場公開)で主演する柄本佑が本作のナレーションを務めている。そのことについて長尾さんは、「柄本さんはしゃべりがうまい。『痛くない死に方』の主演ということで縁をいただきまして、映画(本作)が引き締まっているように感じました。柄本さんは『痛くない死に方』の撮影前に長尾クリニックに来て下さり、一緒に在宅の現場を1日回ったんです。いろんな話をしました。すごい感性の方だなと思いました」と大絶賛だった。

「痛くない死に方」では、長尾さんをモデルにした在宅医の役を奥田瑛二が演じている。長尾さんは、「天下の二枚目俳優が僕の役をやってくれるって言っても、うちのスタッフは、誰も信じなかったんです。携帯をいつも胸ポケットに入れているというのをそのままやって下さいました。奥田瑛二さんに僕の言いたいことを(セリフで)言っていただいているので、ありがたいと思いました」と感謝の言葉を述た。

最後に毛利監督から、「2019年の尼崎の町医者の2ヶ月間を切り取った作品です。先生たちは、泥臭く地味なことを日々やられていて、頭の下がる思いです。医療従事者の方にも本作を見てもらえたら幸せです。本作は一つの提示です。『こういう医者もいる。あなたはどうしますか?』その問いかけになればという思いで編集しました。リビングウィル、尊厳死のことでも構いません。この映画のことでも構いません。心に響くところがありましたら、ご家族、お友達に語っていただければと思います」とメッセージが送られた。

「けったいな町医者」は、「好きな物を食べたい」「最期まで自宅で過ごしたい」「痛くない死に方がしたい」といった、患者と家族の想いを守るために”町医者”として全力を尽くす長尾さんの姿が収められたドキュメンタリー映画。生と死を見つめる内容となっている。

けったいな町医者
シネスイッチ銀座にて1週間公開中ほか全国順次公開
配給:渋谷プロダクション
(c)「けったいな町医者」製作委員会

© 合同会社シングルライン