中日・根尾は内野と外野どっちで生きる? くすぶり続ける“論争”は「僕の責任」

中日・根尾昂【写真:荒川祐史】

今季初の対外試合となった13日のDeNA戦で3安打固め打ち

プロ3年目を迎えても、関係者やファンからの注目は随一と言っていい。中日・根尾昂内野手の姿に、春季キャンプでも多くの視線が寄せられる。誰もが認める潜在能力ゆえ、入団時から「どのポジションで生かすか」と議論を呼んできた。昨季は外野にも挑戦したが、今季は遊撃でのレギュラー奪取を宣言。定位置を確保して、その“論争”に終止符を打ちたい。

今季初の対外試合となった13日のDeNAとの練習試合(北谷)。「1番・遊撃」でスタメン出場すると、即座に結果で応えた。初回の第1打席でDeNAの先発・上茶谷から右前打を放つと、6回の第3打席では浜口から左翼線への二塁打。先発ローテの一角として期待される両投手から快音を奏でて勢いに乗ると、8回には左腕の砂田から中前にポトリと落ちる当たりで3安打の固め打ちをしてみせた。

断続的に雨が降るグラウンド状況の中、守備もそつなくこなし「打つこと守ることに関しては、ちょっとずつキャンプの成果は出てきていると思います」とうなずく。ベンチから見た与田剛監督も報道陣に対し「守備もうまくなっていたでしょ? スローイングも球の回転よくなっていた」と評価。今後もしばらく遊撃で起用することを明言した。

投手と遊撃手を主に担った大阪桐蔭高時代は、3年間で3度の甲子園優勝を経験した高校野球のスター。2018年のドラフト会議ではドラフト1位で4球団競合の末、中日に入団した。二刀流も期待されたが「ショート1本」と腹を決め、プロの世界に飛び込んだ。

ただ、入団直後から“壁”が立ちはだかっていた。2017年にセ・リーグ新人王に輝いた京田陽太内野手が不動のレギュラーに。打撃不振で数試合スタメン落ちをするシーズンもあったが、守備は年々成長。根尾にとっては、リーグ屈指の名手がライバルとして存在する。

13日の練習試合では3安打とアピールした【写真:小西亮】

昨季1軍でスタメン出場した7試合は全て「外野」

そんなチーム状況もあり、関係者やファンの間では「外野で使った方がいいのでは?」との声も少なくない。実際、昨季には外野にも挑戦。1軍でスタメン出場した7試合はすべて外野だった。長年センターを守ってきた大島洋平外野手は全く衰えを見せないものの、今年で36歳。“ポスト大島”が叫ばれて久しい中、筆頭候補に根尾の名前があがるのもうなずける。

外野を推す声に対し、自身は「そういう事も言われてるな、という程度です」と意に介さない。もちろん選手としての幅を広げたり、経験を積んだりする面では必要な場合もあるが、そんな選択肢が出てくることを自らの不甲斐なさに置き換える。

「結局ショートで出られていないから、そういう話も出てくるんだと。自分の責任ですし、ショートでしっかりできていれば、自分も認められていると思います」

二者択一ではなく、あくまで一択。何と言われようが、チャンスが与えられている限りは遊撃の壁にぶつかり続ける。「勝つために自分の良さを考えてきました。その上でまずは守備だと」。現時点で最も差が開いていると自認し、誰よりもノックを受ける。

後半に差し掛かっていく今キャンプ。疲労はピークを迎える中でも「全く痛いところはありません」と貪欲さは増すばかり。わずかでも確かに聞こえる成長の足音。この1年間で圧倒的な自信を宿し、「遊撃・根尾」で全ての人を納得させてみせる。(小西亮 / Ryo Konishi)

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