【東日本大震災10年】若手の感性、防災に生かせ オンラインでワークショップ「むすび塾」、活動を共有

今後の活動に向け、「繋(つな)ぐ」をキーワードに掲げた井ノ上さん=横浜市中区

 東日本大震災の教訓に学ぶ防災ワークショップ「むすび塾」が13日、初めてオンラインで実施された。全国各地で備えや継承に取り組む若手が活動の成果や悩みを共有。神奈川からは中高生らの災害ボランティア団体「3.11つなぐっぺし」高校生代表の井ノ上敦也さん(17)=逗子市=が参加し、災害をいかに「自分事」として捉え、次の世代に伝えていくかを話し合った。

 河北新報社(仙台市)が展開する「むすび塾」を共催した全国の地元紙や放送局でつくる「311メディアネット」の主催。各地で活動する10~30代の12人が発表した。

 宮城からは、児童ら84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校で当時2年生だった弟を亡くした大学4年永沼悠斗さん(26)が報告。震災遺構として整備が進む校舎の前で「一番の後悔は(三陸沖でマグニチュード7.3の大地震があった震災2日前の)3月9日。砂浜にいた自分は津波が怖くて全速力で逃げたが、そのことを家族に話さなかった。そうしていれば弟たちの命を守れた」と振り返り、「2日間でもできることはある」と訴えた。

 震災時は小学1年だった井ノ上さんは、風化を防ごうと、音楽や食を組み合わせた防災イベントなどを企画する団体の中心メンバー。「風化の防止は形でなく心に残るもの。活動の実感を感じにくい」と明かす一方、「『防災×楽しいこと』を大切にしている」と若い世代の興味を引く工夫の一端を紹介した。

 他にも、「地域や家庭を巻き込み、逃げることの大切さを伝えたい」(北海道教育大釧路校の佐藤愛佳さん)、「防災は日常生活の延長線上にある。区別する必要はない」(関西大高等部の坂本紫音さん)などと、それぞれが重視する視点が語られた。

 阪神大震災の語り部活動に取り組み始めた神戸市の藤原祐弥さん(18)は「これからは若い人が語り継いでほしいと震災経験者に言われ、不安がなくなった」と強調。地域を超えたオンライン交流の継続や会員制交流サイト(SNS)の活用なども話し合った。

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