和装素材アクセサリーに挑む 黒香師工房デザイナー冨田真由さんの思いとは

デザイナーの冨田真由さん

 着物や帯をはじめ、正絹生地を使ったアパレルや雑貨を手掛ける「黒香師工房」(京都市上京区)で、デザイナーとして活躍している冨田真由さん。得意とするのはアクセサリー。「伝統を残していくために着物以外に何かを作れたらと考えていた」。2017年に着物や帯の生地を用いて作るアクセサリーブランド「aturae(あつらえ)」を立ち上げ、企画から製造まで一貫して手掛けている。

 あでやかな和装の素材で作り上げたネックレスやイヤリング、バレッタなどは軽くて華やか。和の雰囲気が洋服ともよくなじむ。伝統と現代のセンスが融合し、新しい輝きがアクセサリーに宿っていく。

 京都生まれの京都育ち。父・冨田伸明さんは世界で活躍する着物スタイリストで「子どもの頃から周りに着物があるのが当たり前で逆に関心は低かった」という。欧州の雰囲気に憧れ、大学ではファッションを学んだ。卒業後はアパレル企業で勤務し、京都高島屋のショップで販売を担当。洋服に囲まれて過ごしたが、家に帰ってあらためて着物を眺めると素材の素晴らしさに気がついた。子どもの頃は分からなかった伝統の美に目覚め、2015年に黒香師工房に入社した。

 新型コロナウイルスの影響で百貨店催事を回っての展示販売活動は停滞気味だが、コロナ禍を受けて製作した「マスク留め」がヒットした。耳にかけずに頭の後ろで留めるおしゃれなマスク留めは「マスクでイヤリングがつけづらかったり、ゴムで耳が痛かったりというお客さんの声を生かせた」という。

 伝統ある和装に向き合ったことで「和の素材は重みがあり、若い世代も関心を持って見てくれる」と可能性を感じている。立ち上げたaturaeでは「アクセサリーブランドの枠をさらに超え、変わっていくニーズを拾っていろいろと求められるグッズに挑みたい」といい、しばらくコロナ禍で活動が制限されるが、「落ち着いたらショップでお客さんと一緒にアクセサリーを作るふれあいの場なども展開してみたい」と夢は広がる。

とみた・まゆ 成安造形大ファッションデザイン科卒。アパレル企業で勤務し、百貨店での店舗販売経験を経て、2015年に黒香師工房に入社。2017年に着物や帯の素材を用いたアクセサリーブランド「aturae(あつらえ)」を発表。ネットショップを開設し、店舗や全国の百貨店で販売活動も続けている。京都市出身。31歳。

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