【欧州サッカー】チェルシー・トゥヘル監督が示した理想の指導者像

チェルシー・トゥヘル監督(ロイター)

1月末にイングランド・プレミアリーグ、チェルシーを率いることになったドイツ人のトーマス・トゥヘル監督(47)が新天地で手腕を発揮している。

就任直後のウルバーハンプトン戦こそスコアレスドローに終わったが、その後はバーンリー、トットナム、シェフィールド・ユナイテッドを相手に3連勝。11日のイングランド協会(FA)杯5回戦でもバーンズリーを下し、不敗記録を伸ばしている。

前任者のフランク・ランパード氏の功績にリスペクトしながらも、これまで培ってきた戦術を新チームに浸透させた。そのやり方は実に厳格。英メディア「スカイスポーツ」に対し、あるべき指導者像について語った。

「私はメディアに優しくしようとしているが、それはロッカールームで選手に愛されようとふるまっているとは限らない。実際、そんなことはしていないからだ」

選手に迎合するのではなく、あくまで指揮官の威厳を示し、的確な選手起用をしていくのがトゥヘル流。だが、それは選手を威圧するような〝恐怖政治〟ではない。

「選手を怒鳴ることはしない。もちろん、その必要がある場面がきたら、そうするかもしれない。だが、いつもそんな態度ならそのうち選手たちは私から離れていく。大事なのは信頼関係だ。予期できないことを少しだけ想定し、安定を図るのが仕事だ」

選手に対しての声のかけ方にも気を配る。

「選手がみんなの前で怒鳴られたり、侮辱されるようなことはあってはいけない。だが、チームのために指摘しなければならないことがあるなら、みんなの前で言う。逆に個人の問題は個別に選手を呼んで話す。選手たちがみんなの前で批判を受けても、それに立ち向かえる人格を持ってほしいと考えている」

昨年のクリスマスにパリ・サンジェルマン(フランス)から解任されたトゥヘル監督だが、これはオーナーやフロントとの関係が悪化したことが原因。選手たちは一様にトゥヘル監督への感謝を示していたのも、指導者としてこんな信念を持っていたから。チームは変わっても指導法はブレない。これが名将と呼ばれるゆえんかもしれない。

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