長崎県佐世保市の早岐瀬戸で、ワカメ漁が解禁され、天然ワカメが次々と水揚げされている。ワカメ漁歴50年以上の川原義博さん(72)=有福町=の船に乗り、漁の様子を間近で見せてもらった。
快晴に恵まれた8日午後0時半すぎ、観潮橋付近の護岸を出港。早岐瀬戸は、水質がきれいで潮の流れが速いため良質で軟らかいワカメが育つという。
観潮橋から大村湾方面に約300メートル、護岸から約10メートル離れたところで船を止め、川原さんは約4.5メートルの竹ざおの先端に金具を付けた「芽の葉巻き」を海中に突き刺し、竹ざおをくるくると巻き始めた。竹ざおを上げると、光沢感のある褐色のワカメが金具にびっしりと巻かれていた。採りすぎないように1日に50キロ程度と決めている。
早岐瀬戸のワカメ漁の歴史は古い。市教委文化財課によると、奈良時代に編さんされた「肥前国風土記」に当時の早岐瀬戸の潮の流れが「雷の音と同じ」ほど速く、「海藻の生育が早く、朝廷への献上物としている」との記述があることから、既に名産品だったことが分かる。海に面したこの町は古くから交通の要衝として栄え「市」が開かれていた。現在も5~6月になると、早岐瀬戸沿いに新茶や海産物、農作物などの露店が並び、風物詩となっている。
川原さんは10代の頃から父親の手伝いでワカメを採っていた。「30年ぐらい前は30人ぐらいいた」が、徐々にワカメ漁に携わる人は減り、今ではわずか5、6人に。それでも川原さんは「毎年楽しみにしてくれている人もいる。今年はもう40人に配って回った」とうれしそうに話す。
岸壁に戻った後、採れたてのワカメを食べさせてもらった。味が濃く、茎はシャキシャキ。ほんのりと甘みも感じる。「今年は寒さの影響で成長しおいしい。しゃぶしゃぶにして、ぽん酢で食べるのがおすすめ」と川原さん。自宅で早速、湯がいてみると、鍋の中で鮮やかな緑色に変わった。
漁は3月初旬ごろまで続く。地元の直売所などで販売される。