林正樹 「ひとつの夢」だった映画音楽 「すばらしき世界」で実現 エンディング曲&本編コラボ映像公開

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主演・役所広司、監督&脚本・西川美和の映画「すばらしき世界」から、音楽を担当したジャズ・ピアニストの林正樹によるエンディング曲「Under The Open Sky」の演奏と、本編映像を組み合わせたコラボ映像が公開となった。

林は、渡辺貞夫、菊地成孔、椎名林檎ら、多岐にわたるジャンルのミュージシャンのプロジェクトに参加し、小野リサ、椎名林檎、⻑谷川きよしをはじめとする多方面のアーティストとの共演も果たしてきたジャズ・ピアニスト。エンドロールの曲が決まっていなかった時に、劇中で使われた曲「The Open Sky」のロングアレンジバージョンを、林が監督に提案したという。

公開された映像は、林が自宅の作業部屋でピアノ演奏を始める姿から始まる。西川監督自ら「映画の為に作られた楽曲が少しでも多くの人の目に触れるように」と、林に演奏映像を依頼して撮影が実現したという。そして、林が奏でるメロディに乗せて、役所広司演じる三上正夫が旭川刑務所から13年ぶりに出所する姿、「今度ばっかりは堅気ぞ」と新生活への決意を見せる姿、小さなアパートでミシンをかける姿などが映し出される。さらに、三上を支える弁護人の庄司夫婦(橋爪功、梶芽衣子)や、三上に密着取材をするテレビマン津乃田(仲野太賀)の姿も切り取られている。

「すばらしき世界」の音楽について林は、「『映画音楽はひとつの夢』といろんなインタビューで語ってきました、最初になんていいお話が舞い込んできたんだろう!」と感慨を見せ、「自分の音楽人生にとって素晴らしい体験でした、フライング気味ではありますが、また西川作品に携われたら望外の幸せです」と振り返っている。(「すばらしき世界」劇場用パンフレットより抜粋)

エンディング曲について西川監督は、「刑務所を出所して、東京の片隅の古いアパートに引っ越してきた三上が、初めて自分の手で米を研ぎ、小さな窓から洗濯物を干し、ゴミ捨て場で分別を習い、温かく炊けたご飯に卵を落とし、買い物をし、縫い物をし、カーテンをかけ、近所の人に挨拶をするー。絃楽器のピチカートから始まるその楽曲は、まるで小さな子供がおっかなびっくり歩き出すようなあどけなさの中に、生きる悲しみと喜びを編み込んだ味わい深い曲だ。エンディング曲はそれしかないと全員が思った」と言及している。

「すばらしき世界」は、直木賞作家・佐木隆三氏の小説「身分帳」を原案とし、西川美和が監督・脚本を手がけた作品。西川にとって初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとにした作品で、舞台を約35年後の現代に置き換えて、徹底した取材を通じて映画化に挑んでいる。生きづらい社会の中で、一度レールを外れても懸命にやり直そうとする実在の男と、彼を追う若きテレビマンのカメラを通して、社会と人間の「今」を描いている。

すばらしき世界
公開中
配給:ワーナー・ブラザース映画
©佐木隆三/2021 「すばらしき世界」製作委員会

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