複数ある投資信託口座、どの口座からおろすのがいい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、会社員の女性。現在妊娠5カ月の相談者。出産にあたり、投資信託の口座からお金をおろしたいそうですが、複数ある口座のどれからおろすのが良いでしょうか。FPの伊藤亮太氏がお答えします。

出産にあたり、100万円ほど投資信託からおろしたいと思っています。口座がいくつかあるのですが、どの口座からおろすのが良いのでしょうか。

(1)主人のNISA口座 全世界株式 +15% 50万円

(2)自身のNISA口座 全世界株式 +10% 50万円

(3)自身の特定口座

・外国株式 +30% 250万円

・外国債券 +10% 100万円

・日本株式 +20% 100万円

・日本債券 +1% 80万円

税金がかからないためNISA口座からおろすのが良いのでしょうか。それとも、+30%と多くのリターンがある特定口座の外国株式からおろすのが良いのでしょうか。リバランスをしつつバランス良くおろすのが良いのでしょうか。考え方をお教えください。よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、30歳、妊娠5カ月、会社員、既婚

・夫(30歳)

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円


伊藤:ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太です。回答いたします。

「どれを売ればよいか?」また「何を買えばよいか?」、こうした質問は多く受けてきました。しかしながら、答えは一つではありません。その後どうしたいか? 何のために投資をしてきたのか? 仮に売却後に価格がさらに上昇したとしても気にしないでいられるのか? こうした質問に逆に回答いただかなければ、こうすべきとはなかなか言えないのが実情です。

さて、相談者の場合、出産のためということですから、出産関連の費用やその後のことも考えたうえで現金化したいという希望かと思います。まず、現預金がどれくらいあるのか? 旦那さんがどうお考えなのか? 本当に売却しなければいけない状況なのかどうかを今一度考えてください(相談内容では相談に至った背景がわからない、金融資産の状況がわからないため)。

仮に現預金がある程度あるならば、無理して売却する必要はないと思います。健康保険から出産手当金も支給されるため、実際にどれくらいお金が足りないかは見積もる必要があると思います。

全ての口座から均等な割合でおろす

そうしたことも当然踏まえたうえで売却するということであれば、いろいろな考え方があると思いますが、相談者の場合トータルで運用資産が630万円ありますので、すべてを均等に5分の1ずつぐらいになるように売却してみてはいかがでしょうか? こうすることで、おおよそ税引き後の金額が100万円ほど(税金は21万円ほど差し引いた後)の資金として確保できます。

この考え方は、資産配分比率を変更しないことを前提としています。仮に最初に決めた配分通りに運用されているのであれば、比率を踏襲し、ある程度比率が変化しないように対応していくことが望ましいのではないかと思います。

税金を減らしたいならばNISA口座を売却

税金をできるだけ減らしたいということであれば、NISA口座を2つとも売却し、100万円を確保するという方法も考えることができます。この場合には、税金がかからずに資金の確保できます。

相談者の資産配分からいえることは、NISA口座で世界全体に投資するように配分しています。また、特別口座では、債券も含めて世界全体に投資するような方法をとられていると思います。そのため、どちらを残してもある程度分散できております。そのため、どちらでも構わないと思います。

全体の運用資産からは、外国株式への比率が高めとなっているため、NISA口座をすべて売却して税金負担も抑えながら、配分を地ならししていくほうがよいかもしれませんね。この方が売却時も簡単、税金面もメリットとなります。

今後はリスクヘッジも意識して

最後に、すぐにではなくても構いませんので、NISA口座を売却後においても、外国株式の比率が高めとなるため、少しずつ積み立て等によって外国債券や日本債券を増やし、ある程度リスクヘッジをできるようにしていくほうがよいかもしれません。また、NISA枠の残りを利用して、外国債券投信を増やしていくことも検討に値すると思います。うまく非課税枠も利用していきましょう。この他、少しずつ外国株式部分を売却し、売却した資金をもとに外国債券や日本債券に振り向ける方法(リバランス)を用いることも検討できると思います。

もう一つ、これはもし該当すればとして聞いてください。仮に資産のほとんどを運用にまわしていて、そのため売却し現金を確保したいという状況であれば、今後は運用へまわすだけではなく、貯金の配分も高めていくことを心がけてください。ここ数年はコロナの影響を除けば株式市場も堅調に推移しているため、たまたま運用がうまくいったかもしれません。しかしながら、今後はそう簡単にはいかないと思います。そのため、何があっても対応できるように、貯金を増やすこともご検討ください。

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