「おいしい」が生きがい 県内 男性料理教室人気

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娘に借りたエプロンを着け、焼きそばを作る高川さん。「人に振る舞うのが好き」と話す=富山市の自宅

■大変さ分かり家庭円満

 人生100年時代、県内でも退職後、料理を一から学び始めるシニアの男性が増えている。「バランスのいい食事で健康的な毎日を送りたい」「おいしいと喜んでもらえるのがうれしい」。料理教室に通って腕を磨く男性からは意欲的な声が上がり、生きがいや家庭円満にもつながっているようだ。(呉人野々子)

 富山市は、60歳以上の男性を対象にした料理教室を市内2カ所の公民館で開いている。現在、新型コロナウイルスの感染防止のため休止中だが、例年定員を上回る申し込みがあることから、再開後も人気が継続すれば、講座を増やすことを検討している。

 「男性の料理への関心が高まっていることを肌で感じる。皆さん熱心ですね」。10年以上前から講師を務める栄養士の祖川ひろみさん(70)=富山市=が語る。受講する男性は分量に厳密で、作り方の順番を理論的に覚えようとする人が多いという。「家族や身近な人に料理を振る舞ったり、他の人と一緒に作ったりすることで会話が生まれ、コミュニケーションが深まる」と話す。

■将棋仲間に振る舞う  料理歴約10年の高川登さん(75)=同市=は毎日3食、自分で調理する。レパートリーは肉じゃがをはじめ、ぬか漬け、ジャム、シソジュースなど幅広い。得意の牛すじの煮込みはショウガをたっぷり入れ、肉がとろとろになるまで煮込む。将棋仲間を自宅に招き、振る舞うこともある。「人においしいと喜んでもらえることが一番うれしい」と語る。

 料理を始めたきっかけは妻に先立たれ、一人暮らしになったことだった。しばらくはスーパーなどで求めた出来合いの総菜で食事を済ませていたが、少しずつ飲酒量が増え、生活が乱れていくのを感じた。「このままでは堕落していく。食事から生活を立て直そうと思った」

 同性の知人に誘われたのを機に、一念発起して料理教室に入った。現在は同世代の仲間で男性の料理サークルを作り、月2回勉強し合う。

 会社員時代は県内の製薬会社で新薬の開発に携わった。相性がいい食材はどれか、どうしたら食材の臭みが消えるのか-。食材をよりおいしく味わえるように、調理手順や加熱温度を考えながらレシピを組み立てている。「化学的な視点で調理している。どんな味になるのか想像するのが楽しい」と笑顔で話す。

■子育て世代と交流も  立山町の泉野榮一さん(73)は料理を始めて6年になる。60歳を過ぎて老後や健康のことを考えるようになり、料理教室に通い始めた。包丁の持ち方から調理の方法まで一から学んだ。妻の禮子さん(74)と一緒に料理し、月1、2回は一人で腕を振るう。家庭菜園で育てた野菜や果物を使うこともある。

 長年、自動車用品店を営んできた。息子に経営を引き継ぎ、一線を退くまでは「仕事一筋」で料理したことは全くなかった。「家事は女性の役割」という古い価値観にとらわれ、台所に立つことに抵抗感があった。「料理を始めて、一食を作るのにどれだけ大変か分かった。妻への感謝の気持ちが強くなった」

 泉野さんが通う料理教室では子育て世代の男性の受講が増えている。調理を通して若い人たちと交流する中で「家事は夫婦で分担するもの」という姿勢に刺激を受けている。「男性も料理するのが当たり前になっている。これからも夫婦でおいしいものを作り続けたい」とほほ笑む。

料理教室で作ったみそを手にする泉野さん=立山町の自宅