ハマの臨海部走る連接バス 「がらがらだけど、大丈夫?」

みなとみらいエリアを走る連節バス「ベイサイドブルー」=横浜市中区

 港町を運行して7カ月が経過した横浜市営の連節バス「ベイサイドブルー」。話題のバスに乗車した市民から「追う! マイ・カナガワ」取材班に懸念の声が届いた。「座席がたくさんあるのに車内はがらがらです。大丈夫でしょうか」。記者は早速、乗り場へと向かった。

 みなとみらいの景色を背に連節バスが風を切って走る。全長18メートルの迫力と鮮やかなブルーの車体が目を引き、通行人の親子連れが「あれだ!」と指さした。

 記者が乗車した平日の昼下がりも乗客はまばら。市は東京五輪を観戦する訪日外国人らの乗車も見込んで昨年7月に計4台を導入し、横浜駅~みなとみらい~山下公園といった横浜の名所で1日最多36便を運行してきた。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の逆風を受け、1日当たりの乗客数は目標の3割ほど。昨年12月に山下ふ頭に「ガンダム ファクトリー ヨコハマ」がオープンした際には1日1400人を乗せたというが、緊急事態宣言下では同300人を下回っている。やはり厳しい状況のようだ。

◆ヘアピンカーブ

 ただ、乗り込めば連節バスの魅力に浸れる。ほろでつながった二つの車両が曲がるシーンは見ものだ。パシフィコ横浜ノース(同市西区)では、サーキットで見るヘアピンカーブのような転回エリアで折り返す難所があり、アトラクションさながらの迫力に、記者は思わず「おお」と感嘆の声を上げた。運賃220円でこの迫力はお得感があるだけに、定員113人に対し乗客10人足らずと目立つ空席が惜しい。

 ハンドルを切ると2両目の車体が特有な動きをするため、コントロールは至難の業だが、ベテラン運転手の長島重美さん(52)は「余裕を持って通れます」と胸を張る。運転席をぐるりと囲むモニターで死角の映像を確認。全方向に意識を張り巡らせ「車体を上から俯瞰(ふかん)した映像」を思い描き、慎重にハンドルを操る。

 ドライバーには精鋭が集う。約1100人の乗務員から立候補や推薦で50人ほどが集まり、さらに22人をえりすぐった。研修は約半年間。前職はトレーラー運転手だった長島さんは「体で覚えるしかない」と構内練習や一般道などを約80時間走って腕を磨いた。

◆路駐をしないで

 ただ、スペシャリストにも越えられない壁がある。パシフィコ横浜周辺は観光地のため、転回エリアに路上駐車が後を絶たず、走行を遮られる事例が相次いでいる。警察に通報したケースだけで3回。20分ほど立ち往生したケースもあるという。

 転回エリアは道路交通法の対象外である港湾道路。市によると、県警の取り締まりには、行政代執行の手続きを要するという。県警の標識は立てられないが、市は独自に「駐停車禁止」の看板を掲げており、今後はパイロンなどを設置して対策を強化する方針だ。

 営業所に子どもからエールの手紙が届くなど、ハマに浸透しつつあるベイサイドブルー。長島さんは「連節バスならではの風景を楽しめる2両目に乗って、横浜の魅力を感じてほしい」と呼び掛ける。

 みなとみらいや赤レンガ倉庫、山下公園、横浜中華街、元町…。魅力あふれるエリアを結ぶ連接バスは横浜の顔となれるはず。各国から集まった乗客の笑顔で埋まる日が待ち遠しい。

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