澤村拓一メジャー入りで巨人の「脱・飼い殺し」方針が再加速の動き

メジャー入りを果たした澤村に古巣の巨人チームスタッフからもエールが送られた

剛腕のメジャー行きが古巣に思わぬ影響をもたらしそうだ。ロッテから海外FA権を行使していた澤村拓一投手(32)のレッドソックス移籍が17日に正式決定し、巨人サイドには驚きと祝福ムードが広がった。ただ、一方では「脱・飼い殺し」を掲げる球団にとってはこれ以上ない〝成功例〟となり、今後は活発なトレードがさらに加速するとの観測も浮上している。

巨人の沖縄キャンプも、いよいよ実戦が本格化してきた。17日には今季初の対外試合となる広島との練習試合(那覇)で、ドラフト1位ルーキー平内龍太投手(22=亜大)が3回無失点の好投。最速は150キロをマークし、原辰徳監督(62)も「初登板のなかであれだけ腕が振れるというのは大きな武器になると思いますね」とたたえるばかりだった。

そんななか、海の向こうからチームには大きな知らせが舞い込んだ。レッドソックスがこの日、昨季途中まで同僚だった澤村との契約合意を発表。巨人のチームスタッフからは「本当に決まったんだ」との驚きとともに「良かったねえ。メジャーでも頑張ってほしい」とエールが送られた。

まさに激動の野球人生だろう。巨人時代の〝晩年〟は制球難が改善されず、昨年9月にロッテへ電撃トレード。すると今度は環境が一変したことも追い風に、新天地では別人のように活躍を続け、ついにはメジャーへの扉をこじ開けた。そのすべての転機となったのは、原監督が「(トレードを)彼のステップアップの材料にすることが正しいであろう」との〝英断〟を下したことにある。この背景には、球団側が推し進めていた「脱・飼い殺し」の方針とも重なり、澤村の放出は最大の〝ヒット作〟となった格好だ。

そのため、別のスタッフからは「こういう良い前例ができたわけだから、今後はもっとトレードが盛んになるかもしれないね」との見方も飛び出した。指揮官をはじめフロント陣は、出場機会を見込めない選手を球団の体裁などのために留め置く風習を捨て去り、活躍の場が他球団であっても限られた野球人生をまっとうしてもらうことを念頭に置いている。それが鳴かず飛ばずとなってしまった澤村がトレードを起爆剤に覚醒し、メジャー挑戦までこぎつけたとなれば…というわけだ。

昨オフには大幅な血の入れ替えが断行され、現在の支配下選手は64人。それでも〝ボーダーレス化〟が進む巨人で生き残ろうとするならば「選手たちはウカウカはしていられないよ」(同)という。もちろん、トレードは相手球団との需要と供給が一致しなければ成立しないが、剛腕のメジャー行きの影響でGナインにはいっそうハイレベルの競争が求めらることになりそうだ。

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