社会運動におけるマジョリティとマイノリティ…よき「アライ」であるために

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月10日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」では、立命館大学准教授で社会学者の富永京子さんが社会運動論における“アライ”について述べました。

◆「#男女平等」ツイートが拡散

日本にある欧州諸国の大使館やEU代表部、国連のアカウントなどが2月5日、相次いで「#男女平等」をつけてツイート。その前日には東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(※現在は辞任)が女性を蔑視する発言について撤回、謝罪する会見を行っていました。

近年SNSでハッシュタグを用いた抗議がよく見られますが、今回も「#男女平等」の他さまざまなハッシュタグが散見。富永さんは、「女性差別の問題ですが、国内外で女性に限らず広がっている」と言い、この日は問題の当事者や被害者以外の人が声を上げることの意義と問題点を提起します。

今回の一連の運動のなかでは、「#わきまえない男」や「#変わる男たち」といったハッシュタグも見られ、「これは抗議に応じる形で女性差別を男性の問題として語るような意図を持っている」と富永さん。しかもその際、男性同士で語るのがメインとなっていて、依然として存在する男性中心社会に対しても「そこに適合、推進している人ばかりではない。男性側も違和感や難しさがあり、それを言語化するのは重要な営みで、とても意義のあること」と主張します。

一方で、非当事者が問題を語ることは社会運動論的に見ても難しく、常に批判や議論があると富永さんは言います。これは言い換えると「マジョリティ(多数派)」と「マイノリティ(少数派)」にも当てはまり、ここで言うマジョリティは単純な多数派ではなく、「いわゆる社会の重要なポジションを占めている主流派」で、彼らが社会においてマイノリティ、つまり当事者の問題に「どう関わるかを考えていきたい」と話します。

◆良き「アライ」であるために大事なこと

その課題の1つは「人によって発言力や影響力に差があること」。これは属性や知名度、知識量などでメディアへの露出も変わり、そのため影響力を発揮するのが必ずしも当事者ではなくなり、当事者に変わってその人が大きな存在になりがち。そして、結果的には「主役であるはずの当事者、マイノリティが置いてけぼりにされ、本来彼らの権利を守る運動だったのに、違う組織文化ができてしまう」と富永さんは危惧。

そうなると「非当事者は黙っていろ」と言われがちですが、運動論が提示する1つの回答として「アライ」を紹介。これは"アライアンス”からきている言葉で、「当事者や被害者ではないけれど、マイノリティの活動を支持・支援している人のこと」。

そして"よきアライ”でいるために、例えば年長者や権力者はしゃべり過ぎ、マイノリティの言葉を奪いがちなだけに「聞くことに徹しないといけない」と富永さん。さらには「自分たちが当事者を脅かせてしまうかもしれない立場だと自覚すること」とも。また、もう1つ大事なこととして「当事者側も感謝しなくていい」と言います。なぜならそれによって組織のなかにヒエラルキーができてしまうから。総じて富永さんは「運動や権利の追求は果てがない、正解がないので、今後もみんなで一緒に考えていきたい」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

© TOKYO MX