加藤伸一氏が指摘 ソフトバンク“V10への死角”先発陣に「目の前」と「未来」の不安

40歳の誕生日を目前に控えた和田は元気いっぱい

【インハイ アウトロー 加藤伸一】巨人V9を超える「V10」を目指すソフトバンクの宮崎春季キャンプを見せてもらった。無観客の中でもグラウンドの熱気と活気は相変わらず。新任の小久保ヘッドコーチが加わり、程よい緊張感の中で充実した時間が流れているように感じられた。

だが仕事柄か、すぐに不安要素も目についた。それは「目の前」と「未来」の両方の懸案と言える。どうしても先発陣が心もとないという点だ。他球団と比較するとぜいたくな話かもしれないが、そこは投手王国。もちろん、取り巻く状況が例年とは違う。

まず両ふくらはぎ不調の千賀、右肩不調の東浜の二枚看板が出遅れている状況。さらに新型コロナ禍による入国制限に伴い、先発の駒として獲得したレイとマルティネスの両右腕がともに来日のメドすら立っていないと聞く。

危機管理として不在想定は至極当然だ。現有メンバーの仕上がりに目を向けると、昨季「投手2冠」に輝いた石川、ベテラン左腕の和田が順調な調整を見せている。そこに先発復帰濃厚の高橋礼が続き、武田、二保、笠谷、大竹らが6枠を競う構図。実戦が本格化する今後に期待するが、質、量ともに盛り上がりに欠けると感じる。

私は現役引退後、コーチ、編成でホークスにお世話になった。編成的視点に立って、この現状が将来に向けても不安要素の一つであると指摘せざるを得ない。投手陣のポテンシャルの高さは認める。「先発をやらせればできる」人間はいるが、私には「先発タイプが不足気味」という危機感が先に来る。杉山、古谷、田中ら楽しみな素材の名前は、パッと思いつくだけでもすぐに出てくる。だが、先発か中継ぎかで言えば、適性は後者だろう。

「野手育成」「右打ちの強打者」は積年の課題だった。ゆえにウイークポイントを潰すドラフトに間違いはない。ただ、その間に「先発型」の確保がもう少しうまくできなかったかと思いを巡らせてしまう。

10年目の武田、6年目の高橋純ら非凡な先発タイプはいる。今後の編成面の戦略と並行して、適性を見ながら先発投手育成も必要だ。

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