秦野をソバの名所に かつての葉タバコのの裏作 ブランド化へ農家有志が組合設立

耕作放棄地を活用したソバ栽培を始めた「ふるさと秦野そば組合」の(右から)諸星さん、桐山さん、小泉さん=秦野市戸川

 神奈川県秦野市で耕作放棄地を活用して、かつて葉タバコ生産の裏作で盛んだったソバを名物として復活させるプロジェクトが進んでいる。わずかになった地元のソバ農家有志が中心となって、栽培から加工、流通販売までを担う6次産業化を視野に入れている。

 秦野のソバ栽培は、主要産業だった葉タバコの収穫後に裏作として広く行われ、8月下旬に種をまき、11月下旬ごろに収穫していた。しかし、重労働に加え、消費量の減少などで1984年に葉タバコ生産が終了すると、ソバ栽培を行う農家も減少の一途をたどった。現在は6軒という。

 そんな中、数少ないソバ農家の桐山清さん(64)、小泉達雄さん(71)、諸星一雄さん(75)の3人が、ソバ作りを通した地域振興を模索。昨年7月に「ふるさと秦野そば組合」を設立した。良質なソバの生産・販売はもちろん、市内の耕作放棄地の有効活用、白い可憐(かれん)な花を咲かせるソバ畑による観光振興などを目指す。

 柱に据えるのが6次産業化だ。組合代表を務める桐山さんや小泉さんによると、ソバは一定のまとまった収穫量がないと、製粉作業を業者に委ねることが難しい。製粉などの加工作業は重労働で、個々の農家によるソバ作りには限界があるのが実情という。

 そこで組合を設立し、収穫や加工用機器を共同購入したり、畑や肥料を適正管理したりして品質向上を図る。「JAはだの」や市内のそば店などに対し、一体となって販路拡大にも努める。

 6次産業化を通じて、桐山さんは「かつて市内に数多くあったソバ畑を復活してブランド化したい」と夢を描く。桐山さん自身も60歳を機に会社経営から農家に転身しており「取り組みを広く発信して若者はもちろん、同世代の人を含め幅広く参画してほしい」と話す。

 事業を軌道に乗せるため1月中旬から、そば粉の品質を保つための真空包装機などの購入に向けたクラウドファンディング(CF)を開始。すでに100万円を超える寄付があった。諸星さんは感謝するとともに「秦野は水が良質なのでいいソバが作れるはず」と、おいしいそばの提供で恩返しを誓う。

 CFは18日午後11時まで行っている。詳しくは、CFサイト「READYFOR」の「秦野そばの味を後世へ」。

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