34歳の「キング」 現役続行のモチベーションは「殿堂入り」

マリナーズのエースとして15年間で通算169勝を挙げたフェリックス・ヘルナンデスが見慣れないオレンジのユニフォームで2021年シーズンをスタートした。昨季ブレーブスとマイナー契約を結び、コロナ禍でオプトアウト(出場辞退)を決断したヘルナンデスは、今季オリオールズとマイナー契約を結んで現役続行を目指している。そんなヘルナンデスを現役続行へと駆り立てるのは「アメリカ野球殿堂入り」という大きな目標である。

2005年8月に19歳でメジャーデビューしたヘルナンデスはマリナーズでプレーした15年間で最多勝1度、最優秀防御率2度、オールスター・ゲーム選出6度、そして2010年サイ・ヤング賞と輝かしいキャリアを過ごしてきた。しかし、若い頃からの登板過多がたたり、30歳を迎えたあたりから成績が大きく悪化。規定投球回到達は2015年、2ケタ勝利は2016年が最後で、2017年以降の3シーズンは合計60試合(うち59先発)に登板して15勝27敗、防御率5.42に終わった。

生涯年俸は2億ドルを超えており、衰えが目立つ身体にムチを打って現役生活にしがみつく必要はない。しかし、ヘルナンデスには現役引退という選択肢はまだない。「殿堂入り」という大きな目標を持っているからだ。「僕にはチャンスがあると思う。でも、そのためにはもう少し数字を積み上げていかなければならない。もし(数字的な)目標をクリアしていけば、殿堂入りを狙えると思うんだ」とヘルナンデスは語る。

通算169勝、2524奪三振を記録しているヘルナンデスにとって、当面の目標は通算200勝と3000奪三振になるだろう。ポストシーズンの経験が全くない点は殿堂入りを目指すうえで痛手となるが、それはヘルナンデスが個人でコントロールできる要素ではない。とにもかくにも勝利と奪三振の両部門で数字を積み上げていくことが重要になる。

昨年のオープン戦では4先発で防御率1.98と好投し、新型コロナウイルスの感染拡大で球界の動きがストップする前の時点では開幕ローテーション入りが有力視されていた。ヘルナンデス自身が「シアトルでの最後の数年間は健康ではなかった。多くの故障と戦わなければならず、楽しくなかった。でも今は本当に身体の調子が良い。準備はできているよ」と語るように、コンディション面の問題はない。投手層の薄いオリオールズで開幕ローテーションに名を連ねる可能性は高いと言えるだろう。

4月に35歳の誕生日を迎えるヘルナンデスだが、残りのキャリアで少なくとも31勝と476奪三振を積み上げ、現在のモチベーションとなっている「殿堂入り」への挑戦権を手にすることはできるだろうか。

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