【MLB】意識改革進むパドレスとダルビッシュが“最適合”な訳 徹底する「ゾーンへの意識」

パドレス・ダルビッシュ有【写真:Matt Thomas / San Diego Padres】

初ブルペン「カットボール、スライダーもすごくいいですし、カーブもいい」

パドレスのダルビッシュ有投手が、バッテリー組キャンプ2日目の18日(日本時間19日)、ブルペン入りして約30球を投げた。自主トレから取り組み出した曲がりの小さいスライダーや縦に落ちるツーシームも試投。打者相手に投げる「ライブBPが楽しみ」と好感触を得た。【木崎英夫】

メジャー10年目のキャンプで初ブルペンを終えたダルビッシュは、その後のオンライン会見で感触の良さを表した。

「カットボール、スライダーもすごくいいですし、カーブもいい。僕の真っすぐは一番の球ではないので、執着はないです。制球はあまりいい方ではなかったので60点ぐらいです」

持ち球を絞り精度を高める考え方がある一方で、ダルビッシュの信条は試行錯誤を繰り返し独自の握りや体の動きから生み出す軌道と落差、スピードの違う球の習得に楽しみを見いだすこと。その探求の制約がなかった昨年までのカブス時代を「自分がどんどん伸びていった」と振り返る。今キャンプでは小さく曲がるスライダーと縦に落ちるツーシームにも取り組み、相手を翻弄する多彩な変化球にバリエーションを加える。そのダルビッシュが新天地で新たな意欲をかき立てられている――。

「今の自分だったら投げられるかもしれない。もう一度教えて頂きたいと思います」

5年前に同球団のアドバイザーに就任した野茂英雄氏から過去に伝授された天下一品のフォークに、再挑戦する機会を待ち望んでいる。

コロナ禍による60試合制の短縮シーズンで行われた昨季、ダルビッシュは12試合の登板でリーグ最多の8勝を挙げサイ・ヤング賞のバウアー(現ドジャース)に次ぐ防御率2.01の好成績を残した。またクオリティ・スタート(6回以上自責点3以内)はメジャートップタイの10度を記録した。球数を抑えて終盤まで粘り続ける投球は、自己ベストの与四球率1.66を生んだ安定したフォームが大きな要因になっている。

堅実さを大切にするティングラー監督の野球にうってつけの存在

2019年の夏、ダルビッシュはジャイアンツ戦で史上初の「5戦連続無四球と8奪三振以上」を記録。昨年、「自分が四球を出すか出さないか、コントロール下にあるのは大きいと思う」と言い切ったが、それまでと比較した自分を「全然レベルが違うくらい上だとは思っています」と成長を実感している。

今月17日(同18日)のキャンプ初日の会見で、就任2年目のティングラー監督がチーム戦略の核として掲げたのが投打における「ストライクゾーンへの意識」だった。タティスJr.、マチャド、ホズマー、マイヤーズらを擁する強力打線だが、同監督が求める意識改革は数字にも反映されている。2019年のパドレスはナ・リーグ15球団中10位の「504」四球だったが、60試合ながら20年は「204」個で6位に浮上。出塁率はリーグワースト3位の.308から20年は.333で一気に7位に。また、昨季の投手陣の与四球は「170」個で、リーグベストのドジャースに追随。防御率は前年の4点台から3点台へと大幅に改善した。

大味なイメージのあるチームだが、堅実さを大切にするティングラー野球には今のダルビッシュはまさにうってつけの存在だ。

「一応、自信は持ちますけど、不安も毎年絶対ある。体もオフシーズンを挟んでますから変わってますし、技術もレベルも変わりますから。そこら辺はあまり考えずに、いつも言うように1試合1試合、目の前の試合に集中していきたいと思います」

起伏に富む長丁場の162試合へと戻る今季も、1試合燃焼で臨むダルビッシュの姿勢は変わらない。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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