<社説>組織委会長に橋本氏 多様性と透明性確保を

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 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、女性蔑視発言で会長を辞任した森喜朗氏の後任に五輪相だった橋本聖子氏を選出した。 新会長選考過程で透明性は十分確保されなかった。橋本氏には新型コロナウイルスの感染状況を見据えた上で、開催可否を含めた難しい判断が求められる。多様性と透明性を兼ね備えアスリートファーストの組織運営を求めたい。

 森氏は、あらゆる差別を禁じる五輪憲章、とりわけ男女平等の理念を踏みにじったことで非難された。もう一つ森発言の問題点は、異論を排して意思決定しようとする組織委の体質を浮き彫りにした。組織委に求められたのは、民主的手続きに基づいて、開かれた議論ができる組織に脱却することだった。

 森氏の辞意が報道されると、日本サッカー協会元会長の川淵三郎氏が森氏から後継指名を受けた。しかし「密室人事」と批判されて辞退した。

 仕切り直しとなった今回の後継選びは、候補者検討委員会のメンバーを公表せず会議をすべて非公開にした。明確な選考過程の説明はなく閉鎖的な体質は変わらなかった。

 橋本氏は、夏季と冬季合わせて五輪に7回出場したアスリートであり、五輪団長も経験している。女性蔑視発言で辞任した会長の後任だけに、女性会長を求める声は根強かった。会見で橋本氏は組織委の「女性理事の比率を40%に引き上げる」と述べた。現在組織委は女性理事の比率が20%。男性中心の多様性に乏しい発想から転換し、組織を改革してもらいたい。

 ところで橋本氏は、森前会長を「政治の師」と仰ぐ。橋本氏が所属する細田派は森氏の出身派閥である。橋本氏が「(今後も)アドバイスをいただかなければならない局面もある」と述べているように、森氏の影響力は残り「院政」につながりかねない。

 過去の不適切な行為も報道されており、国内外から厳しい目が向けられていることを忘れてはならない。

 新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、3月に聖火リレーが予定されている。感染収束のめどが立たず、丸山達也島根県知事が聖火リレーの中止を検討すると表明した。これに対し自民党竹下派会長で島根2区の竹下亘衆院議員が「知事の発言は不用意だ。注意しようと思っている」と語った。森発言で問題になった異論を排する発想そのものだ。知事は県民の命を預かる責任者として、感染再拡大を懸念したのだろう。全国知事会も聖火リレーの具体的実施方法を示すよう求めている。

 「コロナがどうであろうと必ず(五輪を)やりぬく」という森氏の精神論も問題にされた。大会開催ありきではなく、コロナの感染状況を考慮した上で、科学的根拠に基づいた冷静な判断が求められている。開催の可否、観客数の上限、海外からの観客受け入れなど課題は山積している。