スマートシティ実現に向けて共創加速 SmartCityX、三菱地所APで採択企業決まる

トヨタのまちづくり「Woven City」の着工が間近に迫るなど、ますます注目度が高まっているスマートシティ分野。新たなまちづくりの実現に向け、企業同士の共創を促す動きが加速している。今月に入ってからは、オープンイノベーション・プログラムの動きが盛んだ。スクラムベンチャーズの「SmartCityX」や、「三菱地所アクセラレータープログラム2020」は、それぞれの採択企業を発表した。

■6月のデモ発表に動き出した「SmartCityX」

スクラムベンチャーズ(Scrum Ventures LLC、本社:アメリカ)は、昨年8月にオープンイノベーション・プログラム「SmartCityX」を開始した。経済成長やビジネス活性化、さらに高齢化や人手不足への対応、持続可能性といったさまざまな社会課題の解決を目指して、国内外のスタートアップやパートナー企業と事業を共創していくプログラムだ。

パートナー企業には、あいおいニッセイ同和損保、出光興産、積水化学工業、ウーブン・プラネットグループ(旧社名:TRI-AD)、NTT西日本、日本ユニシス、博報堂、JR東日本の8社が参画している。

募集するスタートアップの主要領域は、

(1)コンシューマー プロダクト&サービス、(2)モビリティ、(3)スマートビルディング、(4)エネルギー&資源&サステナビリティ、(5)インフラストラクチャ、(6)ソーシャルイノベーション

の6分野。

スタートアップの募集は昨年8月から11月まで行い、12月から今年1月まで選考を行っていた。公式発表によると、世界39の国や地域、351社からの応募があったという。そして、その中から「SmartCityX」の事業開発プログラムに参加する企業として、

95社(20カ国)のスタートアップを採択

したとの発表を行った。

なお、昨年10月の時点で特に評価された18社(9カ国)の早期採択を発表している。アメリカの

May Mobility

Car IQ

などがモビリティ分野で選ばれ、日本からは施設の空き情報可視化サービスを提供する

VACAN(バカン)

がコンシューマープロダクト&サービス分野で選ばれた。

さらに、今回発表があった95社には、

AZAPA

が進める、生体情報や動作・表情などの指標を数値化・統合してヒトの感性や感情を理解することを目指す

「プロジェクトOlive」

が選ばれている。

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今後、これらの採択企業は、キックオフイベント以降、「SmartCityX」に参加するパートナー企業やサポーター企業、オブザーバー自治体とともに、具体的な事業開発の検討を開始する。5月頃までの事業開発プログラムにおいて、具体的な事業共創に向けた取り組みを本格化し、6月頃に開催予定の「デモデイ」の場でプログラムの成果を発表する予定だ。

■スキームヴァージなどが採択された「三菱地所アクセラレータープログラム」

一方、三菱地所とサムライインキュベートによる「三菱地所アクセラレータープログラム 2020」は、2月1日に採択企業8社を発表した。

このプログラムは、イノベーション創出とビジネスモデル変革を目的として2017年度より実施している。4期目となる今回は、急激な社会変容・行動様式の変化が求められる現状を踏まえ、新しいまちのあり方を提案するパートナーとなるスタートアップ企業の募集を行った。

MaaSを用いたデータ駆動型エリアマネジメント事業を行う

scheme verge(スキームヴァージ)

は、その採択企業8社のうちの一つだ。同社が展開する観光型MaaSアプリ「Horai」に見られるような、エリア全体の回遊をうながす MaaS 整備を行うとともに、そこで得たデータを分析して、観光コンテンツや地域拠点の造成、さらにはDXの推進に取り組むとみられる。そのほかにも、ドローン関連では

AirX

Drone Future Aviation

も選ばれた。

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三菱地所は、今後もビジネスモデル革新を目指し、既存事業領域における競争力強化に加え、「ノンアセットビジネス」や「BtoC/BtoBtoCに着目した新たな事業展開」に注力するとしている。

また、プログラムの運営をサポートするサムライインキュベートは、今後採択スタートアップとの共創支援メンタリングや優れた共創アイデアを持つ企業への出資検討などを行い、共創支援をより強化する方針だ。

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